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春先から初夏にかけて増えるという「自殺者」の数。特に5月は大都市圏において、1年を通して最も自殺者の数が増加する時期と言われています。なぜ、5月に限って自殺者の数が多くなるのか、いわゆる「五月病」との関連性はあるのか、そのことに関する研究結果は出ているのでしょうか。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では、著者で健康社会学者の河合薫さんが、世界中で言われている「5月の自殺者急増」説を紹介しつつ、河合さん自身が大学院在籍時代におこなった検証結果についても明かしています。

※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2018年5月16日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

なぜ5月は自殺が増える「魔の季節」なのか?

毎年、ゴールデン・ウイークが明けた時期自殺が急増することから5月は魔の季節」と呼ばれています。

月別の自殺者数では、になると年平均値から10~25%ほど増え、その後はゆっくり下落。秋になるとわずかな上昇を示すものの、冬になると急下降する「季節曲線」が存在します。

特に東京や大阪などの大都市で5月に自殺者が突出する傾向が強く、平成28年度のデータでも200人以上を超えたのは、3月と5月のみ東京)。他の月が170~180人であるのに対し、217人(3月)、222人(5月)でした。

春先に自殺者が増える季節変化は世界的に認められ、最初に注目されたのは19世紀頃ともいわれています。

なぜ、春先なのか?

世界中の研究者たちは長年、深層解明につとめてきました。が、いまだに一貫した回答は得られていません。

北欧では冬になると極端に日照時間が減ることから、

日照時間が減ると、メラトニンやビタミンDの生成量の変化が起こり「季節性うつ病」を発症し、それが春先の自殺の引き金になる

という説が一般的。

一方、米国では、

春になると花粉の飛散が増え、サイトカインという免疫物質を引き出し、炎症反応を強めるのではないか?

などなど、太陽の功罪を疑う声が多く聞かれます。

日本では五月病との関連が指摘されることが多く、うつ病の発症率や、無気力、不安、焦りなどの関連性が指摘されてきました。

しかしながら、「五月病と自殺の相関は高い」という研究もあれば、「そもそも五月病は存在しない」という説もあり、深層は闇の中です。

そんな中、最近注目されているのが「約束破りの効果(broken promise effect)」です。

草木や動物だけでなく、人間にとっても春は成長の季節。春先に「希望」を抱く心理が存在し、その希望と現実とのギャップが、自殺の引き金になるのでは?と考えられているのです。

とりわけ新年度と重なる日本では、「約束破りの効果」は広く支持されています。

新しい職場や人間関係に期待するも、現実はシビア。思い通りにならないリアルにショックを受け、凹む。

月曜日の電車の人身事故の背景にも、約束破りのリアル世界へ引き戻されるプレッシャーが存在するのでは? と考えられているのです。

ただし、それを裏付けるエビデンスは得られていません。自殺に関する調査は、方法論も、対象者も、何をもって正解とするか? がとても難しいのです。