なぜ中国人は財布を持たないのか (日経プレミアシリーズ)
なぜ中国人は財布を持たないのか (日経プレミアシリーズ)

Kindle版もあります。

なぜ中国人は財布を持たないのか
なぜ中国人は財布を持たないのか

内容(「BOOK」データベースより)
爆買い、おカネ大好き、パクリ天国―。こんな「中国人」像はもはや恥ずかしい?街にはシェア自転車が走り、パワーブロガーが影響力をもつ中国社会は、私たちの想像を絶するスピードで大きな変貌を遂げている。次々と姿を変える中国を描いた衝撃のルポルタージュ。

 自己主張が強くて、爆買いをして、トイレの使い方が汚くて、うるさい。僕も中国の人に対して、そんなイメージを持っていました。ところが、最近の中国は、だいぶ変わってきた、日本以上の「IT社会」になってきているらしい。

 ただ、そういうのは、上海とか、一部の大都会だけじゃないの?とも言われていて。この本は、中国で長年仕事をしてきた著者が、近年の中国を、自らの経験と取材を通じて描いたものです。

 2017年6月下旬、東京・銀座の老舗和菓子店で買い物をしていたときのことだ。
「あっ、そうだ。日本ではまだ現金しか使えないことをすっかり忘れていたわ」
「日本は、こういうところはけっこう遅れているんだよねぇ」
 耳を疑うような中国語の会話が聞こえてきた。

 隣のレジで買い物をしている40代くらいのおしゃれな中国人夫婦が小声で話していたのだ。二人とも片手にたくさんの買い物袋を提げ、もう片方の手でスマホ(スマートフォン)を握りしめている。

 中国の都市部で頻繁に使われるスマホを使った電子決済サービス、ウィーチャットペイ(微信支付)を使って支払おうとしたようだが、日本では電子決済がまだできない店が多いことに気づいたのだ。周囲に中国語がわかる人はいないと思ったはずで、悪気はない。

 この会話を聞いて、「やっぱり今、中国から来日したら、こういうふうに感じてしまうんだろうな」と思い、ひとり苦笑した。

 高度に経済発展している中国でも、多くの人は日本に対して、「自分たちの国よりずっと以前に経済発展した先進国」というイメージを抱いている。しかし、その先進国で、中国では当たり前に使われるスマホによる電子決済がほとんど使えないのだから、相当驚いたに違いない。

 日本でも報道されているので、ご存じの方も多いと思うが、都市部に限らず内陸部でも中国人はスマホ決済を使いこなし、便利な生活を謳歌している。目覚ましいITの進化は彼らに自信と余裕をもたらす。

 中国の都市部だけではなく、内陸部でも、スマホ決済は一般的なものとなっているそうなのです。ただし、著者は、中国のIT化=日本より進んだ社会、とも言えないと指摘しています。

中国では、偽札が少なからず流通し、現金はいちいち確かめないと偽札にすり替えられるリスクが高く、クレジットカードもなかなか普及しなかった、という時期がかなり長かったのです。そういう社会だったからこそ、偽札や偽造カードのリスクがないスマホ決済は「信頼度が高い、革命的な取引方法」として爆発的に普及していったのです。

 日本のように、現金取引、カード決済のリスクが低い社会では、「わざわざスマホ決済に切り替えていく切実な理由がない」とも言えるんですよね。中国の急速なIT化は、アフリカで、もともと据え置き電話があまり普及していなかったために、かえって携帯電話が急速に普及したのと同じような現象なのでしょう。