11月3日、ウルグアイ中央銀行はデジタル通貨「eペソ」の試験運用を、1万人を対象に行うと発表した(同行ホームページより)

 2009年に発行が始まった、インターネット上の仮想通貨「ビットコイン」。当初は1BTC(ビットコインの単位)が1ドルを切るほどだったのが、その後価格は急上昇し、現在は、1BTCが1万ドルを超えるほどの高値となっている。価格は、この1年で10倍、2年前に比べて25倍という急上昇ぶりだ。

 当然、ビットコインは投資の対象として熱い注目を集めているわけだが、「ビットコインはやがて崩壊するが、その基幹技術であるブロックチェーンはこれから伸びる」と予測するのが、新著『アフター・ビットコイン 仮想通貨とブロックチェーンの次なる覇者』(小社刊)を刊行した中島真志氏だ。

 中島氏は1958年生まれ。一橋大学法学部を卒業後、日本銀行に入行。調査統計局、金融研究所、国際局、金融機構局、国際決済銀行(BIS)を経て、現在は麗澤大学経済学部教授を務める。

 中島氏に、ビットコインやブロックチェーンの最新の状況について話を聞いた。

バーナンキ元FRB議長も注目

 私がこの本をなぜ書こうと思ったか。それは、毎年出席している、金融関係のある国際会議がきっかけでした。



 2013年から14年にかけて、その国際会議で最大のテーマとなったのがビットコインでした。出席者の誰もが話題にしている。ビットコインは国境を超えて行き来する新しい仮想通貨だ、これは銀行にとってはゆゆしき事態だ、と銀行関係者は皆考えていたようです。

 ところが、2015年の会議に出席してみると、突然「ビットコイン」という言葉を一切聞かなくなった。入れ替わるように登場し、飛び交っていたのが「ブロックチェーンはすごい」「この技術は本物だ」といった言葉でした。不思議に思って出席している銀行関係の人たちに聞くと「ビットコインはもう終わったよ」「あんなものは使えない」と口々に言うのです。

 当時、日本では「ビットコインは値上がりする」「1億円儲けた」などと、「投資商品」としての側面がクローズアップされていました。ところが海外では「終わった」と言われている。この“内外格差”は何なのだろう。

 そこで改めてビットコインについて調べてみると、本にも書いたように、保有や取引、利用方法などが非常にいびつな構造になっていることが分かりました。

 一方、ビットコインの基幹技術である「ブロックチェーン」に対する評価は高く、「金融の世界を根底から覆すかもしれない」と、注目が集まっています。こうしたことから私は、本の帯にもあるようにビットコインは「終わった」、だがブロックチェーンは「これから本番」だということを、この本で明らかにしようと思ったのです。

 実際、今年の国際会議でもそうでした。2006~14年の間、米連邦準備制度理事会(FRB)議長(日銀総裁にあたる)を務めたベン・バーナンキ氏の講演があったのですが、その質疑応答の中で、ビットコインについての質問がありました。するとバーナンキ氏は、「ビットコインは、規制を逃れるための手段として使われているだけのものであり、長続きはしないだろう。だがブロックチェーンは、潜在力が高く、今後発展するだろう」と答えました。まさに私が本に書いた方向性そのままであり、これを聞いて自分の筋立ては間違っていない、と意を強くして帰国しました。

ビットコインとブロックチェーンの仕組み

 ビットコインとは、インターネットを通じて価値がやり取りされ、紙幣やコインのような物理的な実体を持たない「仮想通貨」の1つです。仮想通貨は世界で1,300種類以上が発行されていますが、その中で、時価総額で約55%と最も大きなシェアを誇るのがビットコインです。

 私たちが日常使っている円やドルといった通常の「法定通貨」は、中央銀行などの公的な主体が一元的に通貨全体の流通を管理しています。また法的な裏付けのもとに、国内で強制的に支払いに用いることができる「強制通用力」と、誰でもが受け取れる「一般受容性」を持っています。

 一方、ビットコインなどの「仮想通貨」には、中央に通貨をコントロールする管理主体がありません。仕組みは基本的にプログラムによって管理されており、また、世界中のビットコイン・ネットワークの参加者が協力して、ビットコインによる取引を確認し、取引処理を行っています。

 こうした仕組みを支えているのが、「ブロックチェーン」という技術です。これは、一定時間内に行われたビットコインによる取引を記録した「台帳」のブロックが、チェーン状に連なっていくことから、このように呼ばれます。ブロックチェーンには高度な暗号技術が使われているため、外部からデータを改ざんされにくく、また匿名性も非常に高い、という特徴があります。そのため、送金や決済といった行為に非常に向いているのです。

 そしてもう1つ重要なのは、ブロックチェーンは「分散型ネットワーク」だ、ということです。このシステム上で取引が行われた場合には、ブロックチェーンでは、その参加者が複雑で高度な計算をすることによって取引を承認します。ビットコインでは、そうした計算をした人に対して、報酬(リワード)として新規発行のビットコインを付与します。これは逆に言えば、コンピューターを使って複雑な計算をすることによってビットコインを掘り当てることになるわけで、これを「マイニング(採掘)」と呼んでいます。