今年9月、麻生副総理は朝鮮半島有事を念頭に「今度は向こう(北朝鮮)から難民が押し寄せてくるだろう。不法入国、逮捕、10万単位。どこに収容するの?(陸に)あげられない。向こうは武装しているかもしれない、武装難民かもしれない。警察で対応できるのか?自衛隊、防衛出動?いや、射殺か?真剣に考えた方がいい。自分の国の話だから」と発言、大きな批判を浴びた。

 北朝鮮情勢の緊迫化が続く中、日本海側の各所に北朝鮮のものとみられる木造の不審船が相次いで漂着。今年に入ってから、その数は64隻に上っている。もし、漁民に扮した外国のの武装難民が離島に上陸・占拠した場合、日本政府には何ができるのだろうか。

 こうした状況は"グレーゾーン事態"と呼ばれるもので、国の主権侵害に当たるものの、日本に対し明確な武力攻撃が行われているわけではないため、自衛隊に「防衛出動」が命じられることはない。あくまでも自衛権の行使ではなく警察権の行使に分類される対応がなされることになる。

自衛隊法では、一般の警察力で治安維持ができないと認められる場合には「治安出動」が、海上保安庁による対処が困難な場合には「海上警備行動」がそれぞれできると定められている。出動には閣議決定が必要となるが、安保法制によって、電話での閣議決定が認められ、意思決定への迅速化も図られた。

 ジャーナリストの有本香氏は「警察や海上保安庁では対処が厳しい場合に自衛隊がサポートすることになるが、その出動の判断は非常に難しい。安全法制の時に国会で議論すべきだったが、集団的自衛権の方にフォーカスされ、与党側もこの部分を曖昧にしてしまった。閣議決定をし、総理大臣に委ねられるという形にしてあるが、そのままでいいのだろうか。さらに、自衛隊法の見直し議論も止まってしまっている。今回もそうした議論が巻き起こっていない」と警鐘を鳴らす。

 「海上保安庁など、現場の心理的な負担も非常に重くなっている。武装難民の判断についてのマニュアル化もされておらず、武器使用基準もはっきりしていない。だからこそ、麻生さんが言っていたような議論が必要なのではないか。

麻生さんのキャラクターや言い方のせいもあるかもしれないが、『武装難民』『射殺』などの単語に反応し、すぐに揚げ足を取るようだと、国土や国民の生命・財産を守るという本質的な問題にまで議論が及ばない。国防というのは、最悪の事態を想定して、その状況にどう対応するのかを決めておかなければならない」。

 さらに有本氏は「日本の領土には6852島もある。多くの国民はこれだけ島があるということも知らないだろう。さらに言うと、人の住んでいる島は440くらいしかなく、人口の8割は本州に住んでいる。そのため離島は過疎化が進んでいて、"国境離島"といわれるようなところには継続して人が住まないと、何が起きるかわからない。

しかし、国民レベルではそういう意識が全然醸成されていない。漠然と日本が島国だということはわかっていても、歴史や地理も含め、国土について知らない人が多い」と指摘。

 「戦後の日本は、『国民は日常生活で忙しいから、なんとなく米国にお願いしときゃいい』みたいな感覚で、国防という部分がすっぽり抜けてしまっている。一方、国会の中でそういうことがきちっと議論されてきたかと言えばそうでもない。票にならないから、安全保障の問題には熱心にならない。

メディアもそういう話題になるといきなりアレルギー反応を起こし、国防に関することを少しでも発言すると叩いてしまうというような状況があったから、より触れなくなった。その三位一体現象みたいなものが続いてきた」。

 さらに有本氏は、日本の情報機関の現状についても憂慮する。

 「それぞれの機関の職員の質は非常に高く、外国からも評価されている。北朝鮮問題でも、公安は素晴らしい情報を入手していたとされている。問題は、日本にはそうした情報を活かす法律も機関もないということだ。

普通は情報を取ってきたら他国と共有したり、逆に謀略を仕掛けたりするが、そのために情報を一元化して、より高度に使っていくというところがない。残念ながら国際社会というのは善意ではできておらず、日本国内にも他国のスパイは暗躍している。そういうことを防ぐためにも、国家としての必要悪的なことはやらないと日本は守れないという現状もある」。

(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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