半年ほど前から楽天マガジンを購読しています。

読み放題定額料金のため、料理関係の雑誌や経済誌など、以前から紙媒体で読んでいた雑誌はもちろん、男性向け週刊誌などこれまではほとんど手に取ることがなかった雑誌も読む機会が多くなりました。

男性向け週刊誌では、政治や経済など時事ニュースの他、新刊本の書評や、ネットではほとんど読めない作家やエッセイストの方々の連載もあり、けっこう楽しみに読んでいるのですが、困るのがセックス関連の記事や劇画です。

書評を読んでいるうちにいつの間にか「人妻の浮気」特集や、胸も露わにした性交シーンの描写に。劇画はもちろんのこと、シンガポールでは漢字を読める華人系の人も多いので、バスや地下鉄に乗っているときにこういう記事に当たるとどきどきしながらすぐに画面をオフにします。

■性的コンテンツが氾濫する日本

地下鉄の中吊り広告ではグラビアアイドルが水着で挑発的なポーズをとって乗客をみつめ、浮気や人妻といった見出しが躍る。コンビニでは一般誌のすぐ隣に成人向け雑誌コーナーが設けられ、駅前の一等地には風俗店の猥雑な看板が並ぶ中、通学や塾帰りの子どもたちが平気でその前を通っていく。現役のアダルトビデオの俳優さんが地上波のテレビに出演して仕事を語る。

日本ではごく普通の光景ですが、はっきり言って、世界的スタンダードでは異常です。

シンガポールでは売春は合法ですので風俗店もありますが、場所が決められていて一般人が近づくことはほとんどありません。

日本のような中吊り広告もありませんが、数年前、ある米アパレルブランドが上半身裸の男性のビル広告を出したときには、「猥褻である」と市民の猛反対に遭って撤去されました。

テレビはもちろん、雑誌や漫画なども、成人向けのものは書店で立ち読みできないようしっかりと包装されて指定年齢未満の子どもは買えないようになっています

性的嗜好は個人的な事柄ですので、幼児ポルノ等を除き法の範囲内で趣味を追求するのは大人の自由ですが、子どもはもちろんのこと、私のように普通に生活していてこのような情報に晒されたくないと思っている人も決して少なくないはずです。

冒頭に書いたように、書評やエッセイを読んでいたら、いつの間にかおもしろおかしくセックスを扱う記事に辿り着いてしまったという話も、日本ならではの現象だと思います。

■浮気を奨励し不倫を叩く矛盾

対照的なのは昨今の不倫バッシングの嵐です。

当初は不倫とバッシングされながらも現在は理想的なカップルと称賛される、糸井重里さんと樋口可南子さん、沢田研二さんと田中裕子さん、政治家では船田元さんと畑恵さん夫婦などがいらっしゃいますし、夫婦の問題はあくまでも当事者にしかわからないことですから、昨今の報道は度が過ぎているとしか思えません。

いっぽうで一般人の浮気や売春を煽り、いっぽうで有名人の不倫を徹底的に暴いて叩く。

このいびつな情報が、子どもたちの目にも否応なく触れてしまう日本の現実を考えると暗澹たる気持ちにさせられます。

■「仕事とセックスは家庭に持ちこまない」が変えた夫婦像

他国と比べて、日本には伝統的に性的な事柄に対して鷹揚な文化があることは私も理解しています。

江戸時代の春画などは現代で言えばアダルトビデオと同等でしょうが、では、これがあちこちに氾濫していたかといえば決してそうではなく、「おばあちゃんが嫁入り道具と一緒にもってきて仏壇の奥にしまっておいた」というような扱い方をされていたと聞いています。

70年代には文豪永井荷風作の春本「四畳半襖の下張」が裁判騒動になり、80年代、私が大学生の頃には「ビニ本」と呼ばれた成人雑誌がありましたが、文字通りビニールが被せてあって立ち読みなどはできませんでしたし、置かれている店も限られていました。

それが現在のように性情報が市井に氾濫する状況に変わったのは、「仕事とセックスは家庭に持ちこまない」と公言したタレントさんの言葉の影響が大きかったように思います。同じ頃流行したCMの「亭主元気で留守がいい」というフレーズも同様ですが、夫婦間のセックスに対する考え方と同時に、性全体に対する日本人の態度が大きく変化したのはこの頃ではないかと感じるのです。

■ますます進む夫婦のセックスレス?

ちょうど3年前、「夫婦の55%はセックスレス! 少子化の最も深刻な原因?」という記事を書きましたが、残念ながらこの状況がこの間、劇的に好転しているとは感じません。

それどころか、昨今の人妻浮気記事や不倫報道をみるにつけ、ますます悪化しているのではないかと危惧しています。

最近、ある女性有名人が書かれた「セックスしたくないのならスキンシップでもいいから夫婦で話し合えばいい」という趣旨の記事を読みましたが、良好な夫婦関係を保つための基本の一つに性行為があるのですから、そこをスルーしてよいことにするというのは根本的な夫婦関係の解決にはならないのではないかと感じます。

■海外にみる夫婦のセックスレス回避の努力

ただ、結婚して何年も経ってお互いに刺激がなくなったり、女性が更年期で物理的に行為が難しくなるという側面は確かに否定できません。

これは特に日本人に限らず、どこも同じです。私の夫が定期的に読んでいるシンガポールの「Men’s Health」という雑誌には健康のためのトレーニングや食品メニューなどの記事と並んで、セックス関連の記事が定期的に掲載されますし、世界中で読まれている女性誌「Cosmopolitan」のサイトを見るとさらに具体的で驚きます。

また、女性の閉経後の性欲減退や性交痛については、HRT(ホルモン補充療法)が有効ですが、オーストラリアの56%を筆頭に欧米では30〜40%程度の普及率なのに、日本ではわずか1.7%にとどまっているのです。

■100年ライフを生き抜くためには、強固な夫婦の紐帯が不可欠

ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーが共演した映画『Mr.&Mrs.スミス』では、夫婦関係がうまくいかなくなったスミス夫妻が結婚カウンセリングを受けるところから始まりますが、その中で「セックスの回数は?」とカウンセラーが質問するシーンがあります。

『チャタレイ夫人の恋人』のように、障がいや病気で正常な性生活が送れない夫婦であれば別ですが、そうでないのなら、夫婦がお互いに満足できる性生活を送ることは良好な結婚生活にとって非常に大切であると思います。

特に、来る100年ライフを生き抜くに当たり、仕事やお金と同様、いや、それ以上にパートナーとの関係はますます重要性を増してきます。

人の不倫や浮気を興味本位に騒ぎ立てるより、まず自分自身の夫婦関係を見直し、より良い関係を築く努力をすることこそが優先課題なのではないでしょうか。