(三菱東京UFJ銀行取締役頭取執行役員 三毛 兼承 聞き手・構成=鈴木聖也(プレジデント編集部) 撮影=的野弘路)

日本最大のメガバンクが緊急事態に陥っている。今年6月、三菱東京UFJ銀行の小山田隆氏がわずか1年で頭取を退任した。頭取任期は通例4年以上で、極めて異例だ。後任の三毛兼承頭取は「伝統的な商業銀行モデルはもはや構造不況化している」として変革に挑む。人工知能(AI)で9500人分の業務を削減し、行名も「三菱東京UFJ銀行」から「三菱UFJ銀行」に変える。狙いはなにか。三毛頭取に聞いた――。

三菱東京UFJ銀行の三毛兼承頭取

■すでに銀行以外、“東京”はなかった

――行名から「東京」を抜きとり、「三菱UFJ銀行」に変更する。

MUFG一体として価値をもっと高めたい。三菱UFJ信託銀行、三菱UFJ証券ホールディングスにしろ、銀行以外は“東京”名は入っておらず、三菱UFJフィナンシャル・グループとして平仄(ひょうそく)が合っている。三菱UFJ銀行にすることによってグループ内の名前が一つになります。

すでに海外では「MUFGバンク」に変えています。海外の銀行マンは「JPモルガンからきている」「自分はHSBCだ」などと自己紹介します。誰も「○○信託銀行の人間です」とは言いません。名刺には大きくグループ名が書かれていて、エンティティ(事業会社)の名前は小さい。グループ名を打ち出すことで、一体感やブランドの価値を高めている。われわれもMUFGでブランドを統一し、グループの一体運営を強化したい。

――現在海外の収益が4割だが、今後この割合を増やしていくのか。

いま明確に5割とか6割といった数値を持っているわけではありません。ただ、現実の問題として、海外収益の比率はまだ増えていく。なぜなら海外のビジネスのほうが成長率が高いからです。これをどこまで増やしてもいいかというのは、まだ議論する段階にはない。たぶん5割を超えるところまで来ると少し議論をしなくてはいけない。

■海外の収益が約4割を占める

――三毛頭取は海外での経験が長い。これまでの経験をどう経営に生かすのか。

私のキャリアの中で海外の経験というのは、だいたい4割。私どものポートフォリオで海外の収益というのも4割で、海外の株主も4割になった。われわれの事業が変わってきていることは一つ、(国際畑であることを)経営者として期待されていると思います。いまは、企業統治や事業展開にしても、グローバルに物事を考えていく必要がある。海外でやってきたことが、国内でも役に立つ。

それから私は、統合のプロジェクトを多く担当してきた。たとえば三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)ができるとき。東京三菱銀行とUFJ銀行のシステム統合にかかる投資額は約2600億円で、これはNASAのプロジェクトに匹敵する世紀の大計画だといわれたが、そこで私は銀行統合のプロジェクトチームのリーダーを務めました。タイでアユタヤ銀行を買収したときも現地で支店との統合を指揮した。米国でもユニオン・バンクと銀行の支店の経営統合を仕上げた。こうした統合の経験はチームを率いていくうえで、プラスになることがあると考えます。

■資産1億円以上が120万~130万人いる

――9500人分の業務をAI(人工知能)などで自動化するとのことだが、その分の行員の職務はどうなるのか。

簡単な事務などはシステム化し、これによって解放される人的資源は顧客と向き合う業務や全体のプランニングをする付加価値の高い職務に回します。僕らの銀行では口座の住所変更といった「届出書」がだいだい年間で800万件ほど顧客から提出され、その7~8割は店頭で処理されています。それを自動化すると店員1人が顧客と向き合う時間が3倍にもなるのです。

実は人はいくらいても足りない。たとえばウェルスマネジメント(顧客の資産運用)。われわれの顧客で背景資産を1億円以上所有する人は、120万~130万人いるとみています。これに対して、運用の相談にのる担当者が2600人ぐらい。全然足りない。富裕層以外も含めた顧客の数は3000万人で、まだまだリーチできていない。自動化でここに人員を向けられるようになるわけです。

三菱東京UFJ銀行の三毛兼承頭取

――業務効率化などで、国内の支店は減るのか。

日本の人口は減っているので、マクロでいえば「減る」という方向だと思います。必要であれば統廃合も考えていく。ただ、9500人分の仕事が自動化で減り、支店はいらなくなるというほど単純ではない。支店のあり方については事務をやる場所から、顧客ともっと向き合って、お話をさせていただく場所に変わっていくかもしれません。

アメリカでは、(最大手の)バンク・オブ・アメリカなどが都市部で支店を増やしている。ただ支店の形が全然違う。コンサルテーションが中心です。日本でも、いまと同じように各支店が目抜き通りの一等地にある、という形ではなくなるかもしれない。支店の数ということでは、ひょっとしたら増えていくかもしれません。

■約1500人で仮想通貨を実験中

――仮想通貨の基盤技術「ブロックチェーン」や金融とITを融合した「フィンテック」といった新技術はどうみているか。

新技術の一つひとつはまだ小さいと感じますが、ブロックチェーンについては、自前の仮想通貨「MUFGコイン」での実験を始めました。現在1500人ほどが参加しており、来年には行員全体に広げてユースケースを増やしていこうと思っています。「USC」というアメリカの仮想通貨の実証実験にも参加しています。

中央で一括集中管理をしているものと違ってブロックチェーンを使ったものは運用コストが非常に低くなります。そのうえ処理も速い。この技術が将来のインフラになりうるのか、見ていきたいと思っています。

※取材日は10月4日。インタビューは、プレジデント編集部のほか4社合同で行われた。

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三毛兼承(みけ・かねつぐ)
三菱東京UFJ銀行取締役頭取執行役員。1956年生まれ、東京都出身。79年慶應義塾大学卒業後、三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)へ入行。87年米・ペンシルバニア大ウォートン校修了(MBA)。専務執行役員、副頭取などを経て、2017年6月より現職。趣味は剣道と温泉めぐり。

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