中国で絶大な人気を誇る蒼井そらさん 第28回 東京国際映画祭 オープニングセレモニー(レイジー・ヘイジー・クレイジー)2015年10月21日 Photo by Dick Thomas Johnson

文谷数重(軍事専門誌ライター)

【まとめ】

・北朝鮮の行動を変化させるには圧力ではなく関与政策しかない。

・日米韓は経済交流復活により、政治・文化的影響を与えることが可能。特にエロやゲームなど資本主義の毒の注入が有効。

・最後のフロンティア北朝鮮市場を中露に奪われないためにも経済交流が必要。

日本では対北政策に関しては制裁強化がコンセンサスである。9月3日の核実験をうけた追加措置に関しても日本国内では賛同のほかは見られなかった。むしろ安保理決議においては「生ぬるい」ととられていた。決議案提出に際し、石油全面禁輸から輸入量上限設定に切り替えた時には「後退」と批判的に評されたほどだ。

JB170914montani01

▲写真 北朝鮮の弾道ミサイル 2017年3月6日北朝鮮西岸の東倉里(トンチャンリ)付近から発射されたもの Photo by Mariusstad

これは関与政策が役立たないと考えられた結果だ。従来の対話路線は失敗とされた。そして北に対しては圧力だけが有効策とされている。核と弾道弾対策としては政治・経済的な制裁、あるいはそれ以上の措置、軍事力を用いた圧力やその行使だけが有効と考えられている。

しかし、関与政策は本当に効果がないのだろうか?

むしろ逆だ。北の行動を変化させるには圧力ではなく関与政策を選ぶしかない。

特に日米韓としては経済交流の復活を目指すべきである。

なぜなら日米韓の制裁は効かなくなっている。各国はカードを切り尽くしている。既に経済交流を失った以上、北は日米韓の制裁を進められても痛くも痒くもない。

対して経済交流の利益を与えれば北はそれを意識せざるを得なくなる。日米韓との意向を多少なりとも、少なくとも今以上には気にするようになるからだ。

■ 利益喪失による抑制

北朝鮮の行動は、経済交流により変化させられる。

JB170914montani02

▲写真 ピョンヤン市内の地下鉄 2015年5月 Photo by 東京のエビフライ

その効果の第一は行動の抑制だ。貿易、投資、援助といった経済交流が復活すれば、ある程度は北も対日米韓への敵対行為を抑制するようになる。

なぜならば、北にとって敵対行為の敷居が高くなるからだ。もちろん、それで核や弾道弾を放棄することは、おそらくはない。だが、実験や試射には多少なりの影響を与えられる。実施により経済交流の利益が失われると考える。

特に、北の経済セクターの行動はそう変化する。不利益をできるだけ回避しようと考えるようになる。北の安全保障セクターが対外刺激を伴う行動を取ろうとした場合、経済セクターは力関係で負けるとしても、消極的なりとも抵抗するようになる。

場合によれば指導者レベルでの抑制的判断も得られる可能性がある。経済セクターが経済面での不利益の提示等により、そこまで持っていければ全くない話ではない。

金正恩は愚昧な三代目ではない。祖法を振り回すだけの人物ではなく、実利を見通す力量はある。偶像的な自己権威を守る必要はあるだろうが、その過程でも北の国益と調整できるだろう。

これは実績からも窺えることだ。金正恩は市場経済を進めることで経済成長を達成している。貧富の差の拡大といった課題はあるものの経済封鎖下でありながら各階層の生活水準を向上させた。対外政策でも米韓を手玉にとっている。

JB170914montani03

▲写真 ピョンヤン市内

その点で現実的判断は期待できると見てよい。体制保証の観点から核と弾道弾は放棄できない。ただ、核実験の実施や弾道弾の試射に関しては外交・軍事的必要性と経済的利益と天秤にかけることはするだろう。

逆にいえば、経済交流が途絶した現況は全くその効果も期待できない。経済制裁により輸出入や投資はほぼ止まっている。結果、北は日米韓との対立において経済的不利益を意識しない状態である。経済面で北は核実験や弾道弾試射を躊躇う必要はないということだ。