2016年5月、千葉県柏市でのコンサートでバンドゥーラを奏でるカテリーナさん(筆者提供、以下同)

 物悲しい弦の響きと透明感のある美しい歌声が、優しく空間を包み込む――。

 ウクライナ出身のカテリーナ・グジーさん(31)は、日本で2人しかいない「バンドゥーラ」奏者だ。バンドゥーラとは、60本前後の弦を爪で弾いて演奏するウクライナの民族楽器。この楽器には「ウクライナのすべてが詰まっている」という彼女は、日本に移住し、活動を始めてすでに10年以上経つ。

 旧ソ連時代のチェルノブイリ近くで生まれた彼女は、1986年、生後1カ月で原発事故に遭遇し、一家はキエフに避難。幼少時からピアノを習い、後にバンドゥーラを始め、音楽学校で演奏家を目指す。

 祖国ウクライナは1991年、旧ソ連崩壊にともなって独立したが、2013年末、親露政権と反政府勢力との紛争が勃発し、翌年、ロシアが軍事介入の果てにクリミアを強引に併合したことは国際社会で大きな問題となった。日本など欧米諸国のロシアに対する経済制裁は今も続いている。

 家族が残る祖国の混乱に心を痛めながら、遠く離れた日本でバンドゥーラの演奏活動を続けるカテリーナさん。生後間もなく体験した原発事故を、図らずも日本で再び経験することになった数奇な運命――。バンドゥーラの魅力とともに、自身の半生を語ってくれた。

琵琶法師との共通点

「バンドゥーラ」という楽器をご存じの方は少ないかと思います。この楽器は、弦の数が多いのが特徴。私は64弦ですが、67弦まで増やすことができ、厳密に本数が決まっているわけではありません。