なぜ、世界は“右傾化

なぜ、世界は“右傾化"するのか? (ポプラ新書)


Kindle版もあります。

なぜ、世界は“右傾化”するのか? (ポプラ新書)

なぜ、世界は“右傾化”するのか? (ポプラ新書)

内容紹介
あり得ないことだらけ! ニュースのプロは世界をどう見ているのか? 世界に「昔はよかった」という流れが生まれている一方で、くい止めようとする力も働いている。

 イギリスのEU離脱やトランプ政権の混乱が続く中、仏大統領選では極右政党の代表が選ばれなかった。

 先が読めない時代を私たちはどのように見ていけばよいのか。 現場取材をしながら独自の視点でニュースを解説する池上彰と増田ユリヤが、複雑化する世界を読み解く。

 イギリスのEU離脱やアメリカでのトランプ大統領の誕生と、世界中が「自国ファースト」になり、排外主義の人が増えてきている、と僕も思っていました。

 でも、この池上彰さんの解説と増田ユリヤさんが現地で取材したものを読んでみると、「メディアが危機感を煽っているほど、そこで生活している人たちは極論に押し流されているわけではないのだな」ということがわかります。 

 この本の最初のほうで、池上彰さんと増田ユリヤさんは、こんな話をされています。

増田:自分の経験としては、これまで取材をしてきて、行く前に言われている状況と実際の現場が一致するなんてことはほとんどありませんでした。報道されていることと、現実とはいつも少しずつズレています。これは海外でも日本でも同じだと私は思っています。

池上:台本通りにはいかないし、それが本来のジャーナリズムの現場ですよね。

増田:何かの対象を、他人が見て、それを伝えた場合でも、大枠は同じように私も捉えると思います。でも、私自身が見たときとではやはり感じ方が違うことが多いのです。

 うまく理解できる人というのは、勉強をきちんとしていて知識があって、その勉強した通りに理解できます。あるいは、理解しようとします。

例えば、フランスの極右政党と呼ばれる国民戦線のマリーヌ・ルペン党首に話を聞きにいくとすれば、まず自分の中に極右というものの知識やイメージが勉強したりすることによって蓄積されていて、ルペンの話す内容がそのイメージと重なるかどうかを確認することを中心に据える人たちがいると思うんです。しかしそういうふうには私はできないんです。

池上:自分の中にでき上がった枠組みに事実をあてはめるようなことは、増田さんはしないということですね。

 ルペンの話の喩えでいうと、記者がルペンに話を聞きにいってみたら、意外にまともなことを言っている。でも、そんな内容の原稿を日本に送ろうものなら、デスクはダメだというかもしれない。ステレオタイプから外れるから。ならばと、ルペンの集会に来ている人たちの様子を見れば、排外主義的なふるまいがあったり、取材のカメラに強い拒否感を示したりする場合もあるので、それを報道しておこうということになる。 

増田:排外主義的な雰囲気を握ろうとあえて探すわけですよね。

池上:そういうことはもうやめるべきです。世界の状況が変化している中で、マスコミもこれまでの枠組みで人や社会を見るのではなく、新しい動きがあるわけですから、起こったことを見えているままに極力そのまま報じる姿勢も必要ではないでしょうか。

 この本を読んでみると、メディアから警戒されている政治家は、その「極端なところ」が強調されて伝えられるし、「右傾化」している人がいる一方で、理性や勇気をもって、排外主義を否定する(あるいは、ボランティアとして、難民たちに地道な支援をしている)人たちも大勢いるのです。
 そもそも、「移民」も、多くはちゃんとその地域に根ざして長年仕事をし、税金を払ってきているんですよね。

 まあ、それもある意味「良いところばかりみている」のかもしれませんが。
 テレビ番組を制作する側からすれば、「世界は意外と右傾化していないみたいです」「あの極右候補は、案外まともなことを言っている」という映像よりは、極論や攻撃的な面のほうが「インパクトがある」のは事実ですよね。

 悪意はないとしても、「仕事として、そういう映像をつくってしまいがち」であることは、知っておいて損はなさそうです。
 あれだけテレビに出ている池上さんが、仰っていることでもありますし。