後者が支配する地上波テレビはオワコン》とツイートしたところ、「ワイドナショー」で松本がその言説を槍玉にあげる。そのことで中田は松本に対する批判を展開。したらば所属事務所が謝ったほうがいいと言い立てる。それどころか「テレビからの出演依頼も激減したという」と記事にはある。なんとも忖度が絡みあった事態である。

あらかじめ自主検閲をしたうえで企画を立ててくる

 すっかり時代のキーワードと化した忖度。今年に入って、森友学園問題を機に一般に定着する。それどころか、ご当地・大阪では「忖度まんじゅう」まで登場し、土産菓子として人気だという。

 この忖度については、二年前に刊行された辻田真佐憲『たのしいプロパガンダ』(イースト・プレス)が示唆に富んでいる。

 プロパガンダと聞くと、政府や軍など公的機関が主導となって制作されたものを想像する。しかし、役人や軍人が推し進めるようなものはつまらないのが相場だし、そんなものに大衆は見向きもしない。


オリエンタルラジオのふたり ©松園多聞/文藝春秋

 そのためこの著書によれば、戦前の日本の優れたプロパガンダは、《民衆の嗜好を知り尽したエンタメ産業が、政府や軍部の意向を忖度しながら、営利のために作り上げていった。》

 たとえば大本営陸軍報道部で雑誌の検閲を担当していた軍人は、戦後、次のように振り返る。《出版社のベテラン社員は、自分たちが指示するまでもなく「軍の考えていること、軍の望むところ、はては報道部の嗜好まで先刻承知していて」、あらかじめ自主検閲をしたうえで企画を立ててくるため、文句のつけようもなかったと。》

 娯楽を活用して国民が自発的に協力したくなるように仕向ける、これが「陸軍の総力戦研究の到達点」でもあった。それは忖度によって組み上げられていったものといえよう。

 能年玲奈改め「のん」の干されっぷり、テレビでの無視されっぷりは、芸能界・テレビ界に確立された「忖度の体系」の到達点だろうか。