7月15日で65歳になった小池百合子氏。都知事に就任して1年を迎え、新聞各紙も都政に厳しい注文をつけるようになっている。ただし、都政の先の国政進出について、掘り下げた論考は見当たらない。国民の関心事は、小池氏が女性初の首相になるかどうか、という点ではないか。そして焦点は「いつまでになるか」のはずだ――。

■「小池知事1年」は朝日と毎日だけ

この8月で小池百合子氏が都知事に就任して1年になる。朝日新聞と毎日新聞が2日付紙面でそれぞれ「真に『開かれた都政を』」(朝日)、「イメージより課題解決を」(毎日)との見出しを掲げ、小池都政を厳しく批判し、注文を付けている。

全国紙で「小池知事1年」を社説のテーマにしたのはこの沙鴎一歩が調べた限り、朝日と毎日だけである。

しかし朝日と毎日も国民が関心を最も寄せる小池氏の国政進出、つまり女性初の内閣総理大臣(首相)の可否については、ひと言も触れていない。だから社説は「面白くない」といわれるのだ。かつて社説を10年以上にわたって執筆してきた記者として非常に残念である。

■朝日は「大きな疑問と不安がある」と批判

まず朝日の社説。「先月の都議選では支持勢力が議会の過半数を占めた。『都民本位の都政』『都民に開かれた都政』という自らの公約の実現に向けて盤石の体制を確立した形だが、ここまでの歩みを見ると大きな疑問と不安がある」と書き出す。

ここで「大きな疑問と不安」とは何だろう、と読み手に考えさせ、「知事はこの間、任命した外部顧問らとの間で重要な方針を決める手法をとってきた」と指摘する。

そのうえで朝日社説は具体的事例を挙げていく。

■「市場関係者や都民は戸惑うばかりだ」

「たとえば市場移転問題だ」

「知事は6月20日、突然『築地は守る、豊洲を活(い)かす』」を基本方針として発表した。その4日前に知事も出席して開かれた都の『市場のあり方戦略本部』の最終会合では、まったく議論にのぼっていなかった話だ」


48階建ての東京都庁。知事室は7階にある。

「会合をネットで傍聴していた都民は『両立』など想像しなかったに違いない。それは都庁幹部も同様で、発表直前まで知らされていなかったという」

「基本方針に関与した顧問らはその後、豊洲には『一時移転』するだけだと、ツイッターなどでくり返し発信している。一方で、知事もメンバーである都の幹部会議では、副知事が豊洲を市場として『継続的に』運営すると報告し、了承された」

だめ押しも手厳しく、「市場関係者や都民は戸惑うばかりだ。姿勢をあいまいにしたままの知事の責任は重い」と批判する。事実、「移転賛成派と反対派の双方にいい顔をしただけ」との批判は都民から多くあがったし、この沙鴎一歩もそう思う。

ただ朝日がここまで感情的に批判するのをみると、朝日は小池氏がかなり嫌いなのかもしれない。

■取材がないから新聞社説は面白くない

この後、朝日社説は「もうひとつ大きな注目を集めた五輪の計画見直しでも、顧問らがまとめた英文リポートが、知事から国際オリンピック委員会のバッハ会長に手渡されたことがあった。都議会で内容を尋ねられた都幹部は『作成の経緯に関与していない。答弁は控えたい』と言うしかなかった」と書く。

そのうえでまた厳しくこう批判する。

「議論の過程をできるだけ透明にし、結論を出したら、理由も含めて自らの口ではっきり語るのがリーダーの務めだ。この当然のことが小池都政はできていない」

「知事は従来の都政をブラックボックスと呼んで批判した。だがこれでは新しいブラックボックスが生まれただけで、都民への説明責任を果たしていない点で変わりないではないか」

「当然のことができていない」とか「新しいブラックボックス」といった表現はかなりきつい。

もちろん小池氏に反省すべき点はある。しかし新聞業界をリードする立場にある朝日新聞がここまで批判するなら、この件について小池氏の反論を聞き、その弁明を含めて書くべきだと思う。

新聞の社説というのは、相手にまったく取材せずに、自社の新聞記事を読んだだけで大上段から相手に切り込むことが多い。だから面白くないのである。