週刊文春には匿名コラムがいくつかあって、「新聞不信」もそのひとつ。先週号のものと合わせて紹介したい。

「アメトーーク!」を投入しての「新聞不信」の嘆き

 今週は「芸人にコールド負けの朝日」と題して、「アメトーーク!」の“高校野球大好き芸人”たちのほうが異常なまでの熱量をもって高校野球を見て、語っているじゃないかと、朝日新聞の高校野球記事の劣化を憂えている。


©時事通信社

 朝日新聞には「北から南から」というエピソードコーナーがあって、「昔はもっとごちゃごちゃと、それこそ知られざるエピソードが並ぶ名物コーナーだったが、今はよくある泣いた笑ったの選手コメントで終わる話がほとんど。その余りの予定調和ぶりは、申し訳ないが『高野連官報』とさえ言いたくなる有様だ」と嘆く。

 地方大会(いわゆる地方予選)は47都道府県で行われるから、その取材は組織力がものを言う。おまけに夏の甲子園では、朝日新聞社は高野連とともに主催者となっている。それがなんだこの体たらくは!という話だろう。

 そもそも高校野球大好き芸人とは何者か。アンジャッシュの渡部建やトータルテンボスの藤田憲右らだ。たとえば渡部は仕事の合間に地方大会を見るために各地をまわり、それどころか、将来の高校球児を青田買いすべく、中学生の試合まで見に行くようになる。

マニアの熱量が専門記者をも凌駕する

 昨今話題のサッカー通・小柳ルミ子は睡眠時間3時間で年間2000試合以上を観戦するというが、高校野球大好き芸人は甲子園や地方大会のみならず、練習試合や朝の散歩までついて回るなど、まさに足で稼いだ情報を持つ。


小柳ルミ子 ©近藤俊哉/文藝春秋

 こうしたマニアの熱量が専門記者をも凌駕するのは痛快な話である。しかし「新聞不信」はここに「何かの崩壊の兆し」をも見る。「大汗をかいて生の人間にぶつかって本音を聞き出し、生の姿をざっくり切り取って読者に提供する。それが芸人に出来て記者に出来ないのは、本末転倒の由々しき事態だ」と。書くために人と接する、そこが希薄になっているのだろうか。