個人が上場して資金調達が出来ると話題のVALU(バルもしくはバリュ)が、サービス開始から2か月ほど経過した。

開始早々1000万円を調達する人が現れた。
上場する人が1万人を超えた。
時価総額1億円を超える人が何十人も現れた。
法的に問題は無いのか?と批判を受けている。


様々な話題を振りまいているが、その理念とするところは「夢や目標をかなえるために何したらいいかわからない人を支援する場所」として作られた。夢はラーメン屋でもクリエイターでも学者でも政治家でも何でもいい。

応援をしたい人は目標をかなえるための資金、あるいは目標がかなうまでの生活費などに資金を提供する。それだけならば従来のクラウドファンディング(ネットを通じてお金を集める手段)などもあった。クラウドファンディングは、ネットを介した出資と言いながら、法的な制限から寄付や購入の延長線上になる。

VALUもまた法的な縛りを受けないように、ビットコインを間に挟み、利益の配当を規約で禁止することで本来の意味の出資ではない。株のようで株でないもの。それがVALUの仕組みだ。

日本の上場企業は執筆時点で4000社程度だが、VALU主は1万人を超えた。上場した人数でいえば国内の上場企業の数をアッという間に超えてしまったわけだ。

このようにスタートしたばかりで盛り上がるVALUだが、大きな問題が2つある。

ひとつは本来お金が必要な人ほど資金調達がしにくく「有名人が知名度を換金する場所」になっているというVALUの理念と矛盾した状況、もうひとつは株式市場を模した事により相場操縦(そうばそうじゅう)が可能な点だ。

現在VALUはベータ版(テスト運用)の段階だが、2つの問題はVALUの最もコアな部分に関わる問題だ。この問題を放置すればVALUは参加者から見捨てられかねない。

※VALUに関する基本的な仕組みを知りたい人は「個人が上場できる」と話題のVALUは「マネーの虎」である。を参考にされたい。

■有名人が知名度を換金する場所が現在のVALUである。


現在、時価総額(発行VALU数×VALUの単価)が円換算で1億円を超えた人は70人程度となっている。これらのうち、多くの人がSNS上で多数のフォロワーを抱え、経済的にもすでに成功しているか成功しつつある人だ。

VALU開始当初の時価総額と発行VALU数はツイッター・フェイスブック・インスタグラムのフォロワー数で決まることから、無名な人は時価総額が低く発行VALU数も少なく、極めて不利な環境でスタートする。

これはVALUの理念から明らかに乖離している。もちろん、会ったことも見たことも無い無名な人にあえてお金を投じようと思うか?と問われると極めて難しい問題でもあるが、プロフィールを充実させ、夢や目標をしっかり書いている人を優先して上場させる、ピックアップして目立つ場所でオススメVALU主として紹介する、といった人力での手間が必要な部分だ。

現状では挨拶をプロフィールに1行だけ書いてあるような人まで上場しているため、そういった人をはじく必要もある。調達資金の持ち逃げも可能な状況であり、何かしらのチェック機能も必要だろう。

株式市場では証券会社や監査法人、取引所、証券取引等監視委員会、そして投資家にマスコミの監視と、あらゆるチェック体制が整っている。VALUもこれらの体制を一部で真似してチェック体制を強化すべきだろう。

■投資の知識がある方が有利?


VALUは株式市場を模した仕組みであることから、資金調達には投資の知識がある人の方が明らかに有利となる。

例えば自分のケースでは、幸いFPとして株式投資の知識があったことから、当初の時価総額が130万円程度から短期間で1億円を超えた。資金調達にはある程度の時価総額が必要となるため、この辺りはVALUで上手いやり方を丁寧に案内したほうがいい。

あるいは上場企業が監査法人や証券会社のサポートを受けて上場するように、VALUへの上場・資金調達をサポートする人が居てもいいだろう。

※VALUの時価総額が1億円であることと、1億円の資金を手にした事は全く異なる点は明確に伝えておく。自分が手にした資金は円換算で10万円程度、調達資金はビットコインの相場にも大きく左右される。

■相場操縦という深刻な問題


相場操縦といってピンと来る人は少数派だろう。聞いた瞬間にヤバイとわかる人は株式投資にある程度慣れ親しんでいる人だと思われる。

株式市場は買い注文と売り注文がぶつかることにより、適切な価格形成がなされる。そして買いと売りには投資家の判断したあらゆる情報や思惑が込められており、その企業に関する情報は(良い悪いを問わず)短時間で価格に反映される。これを「価格に織り込まれる」と表現する。

その時々で株価は上がり過ぎたり下がり過ぎたりするが、長い目(10年、20年単位)で見れば企業価値の周辺を上下しており、フェアバリュー(適性な水準)で取引がなされる。

そういった市場の価格形成機能を阻害する行為が相場操縦だ。一言で言えば不自然な売買、あるいは間違った情報等を流すこと(風説の流布)で適切な価格形成を邪魔することを指す。

具体的な手口は控えるが、現状で相場操縦も風説の流布もやりたい放題だ。

■これから売り出します!という異常なコメント。


一例をあげると、これからいくらで何個のVALUを売りに出します、といった宣言をVALU内のコメント機能で公言するなど、株式市場であれば考えられない行為がごく自然にまかり通っている。

ちょっと価格が上がりすぎたので売り出します、今日はVALUを何個売り出しますなど、初めてVALUに参加した時には度肝を抜かれるようなコメントを目にしたが、現在ではそのような価格や売り出しに関するコメントをしない人の方がおそらく少数派だ(当然、自分は一切そういった発言は控えている)。

現状でこれらは違法行為ではなく、規約上でも禁止されていない。しかし、VALUがあえて株式市場を模した仕組みを取っている以上、適切な価格形成がなされることもまた重要な点ではないかと思う(そうでなければ株に似せる必要が無い)

■VALUの参加者は自浄作用を発揮すべき。


価格変動リスク、売りたいときに売れない流動性のリスク、ビットコイン価格の変動によるリスクなど、VALU社自体の信用リスクなど、リスクの説明は参加者に対してかなり不足しているように見える。

加えて、米国在住のベテラン金融マンの広瀬隆雄氏も、様々な問題点を指摘しながらVALUの参加者は自浄作用を持つべきと苦言を呈する。

今後規約が整備されても運営会社が全てのトラブルを防止する責任を負うのではなく、参加者が自らVALUを健全な場所にする責任を追うべきだ。これは現実の株式市場でも同じだ。ほとんどの投資家がルールを守っている理由は市場が適切に運営されている事が自身の利益につながるからだ。

これは川辺のバーベキューで大騒ぎをしてゴミを放置するような人が居れば、その後は全ての人が利用禁止になる状況に似ている。お店は客が作るというように、場の空気を作るのは管理者ではなく参加者だ。

VALUが無くても困らない人はそれでいいかもしれないが、VALUが意味のある場所として存続するか、問題行動がまかり通る危険な賭場として認識されるかは、参加者次第である。そのために必要なことは規約と、真面目な人が報われる仕組みだ。そのためにも理念にあるとおり夢や目標を持った人がお金を調達できる仕組みの構築は急務となる。現在はその真逆だ。