そんな時代は終わったとばかりに、トム フォード、ラルフローレン、バーバリーなど世界的なブランドが、可能な限り早くダイレクトに僕らとつながる挑戦を始めている。

審査や定義の過程を脱して、新しさを得ようとするつくり手のスタンスには、当然抵抗勢力も存在し猛烈な批判も。業界を超えて議論が沸騰している。まさにこの状態こそが、健全な革新のプロセスだろう。YouTubeもウーバーも初めはめちゃくちゃに叩かれた。

ホテル業界にも例を見つけた。同僚が教えてくれたのは、多様なコンセプトのホテルがいまも生まれ続けるニューヨークにあって、面白い挑戦をしているTHE QUIN。

過熱するデザイン競争では勝ち目が薄いと踏んだオーナーは作戦を変更。ホテルロビーの装飾となる絵画をユーザーが買えるものにした。買い手がつけば、タイトル横に赤い丸のシールが貼られ、展示終了後には買い手に発送されていく。

ホテル側が自らのシンボルとして、高い絵画を仕入れるとなると、アートの評価は難度が上がる。選択はコンサバティブになりがちだ。けれど、売り物にしてまた新しい作品を仕入れられるなら、キュレーションの自由度は増すし、空間も常にフレッシュになる。この取り組み、一見の旅行者にもリピーターにも好評のようだ。

世界的な家具量販店のイケアが、数年前から開催している「ソフトトイコンテスト」も大人たちの「こうあるべき」をスキップしている。

12歳までの子どもが考えたキャラクター案の、絵の形・色をそのままに、年間10種類がぬいぐるみになって、世界中のイケアで実際に販売されるプロジェクト。子どもたちの無限大の空想に手を入れずに形にしていくからこそ、毎年どんなものになるか気になるのだ。

3年で10万点以上の応募があり、販売が軌道に乗っているだけでなく、寄付も行われている。この活動、子どもに選ばせたり、あるいは応募作品のなかから無作為に抽出した10個を形にしたりすると、さらなる不思議と出合える気がする。