少なくとも1990年代にはすでに、「部活未亡人」という言葉が一部の教育関係者の間で使われていたようである。

■20代妻たちの声

「教働コラムズ」のトップページ。英語版、さらには中国語版(準備中)も用意されている。

「教働コラムズ」のトップページ。英語版、さらには中国語版(準備中)も用意されている。

「教働コラムズ」という、教員やその家族らが今年4月に設立したばかりのウェブサイトがある。

「部活動をはじめとした教員の労働環境の苦しさ・辛さをお互いに知り、実際に出会い悩みを共有する」ことを目的としており、部活動に携わる教員本人やその配偶者、さらには生徒の保護者の声などが「コラム」として掲載されている。

ここで、夫が部活動顧問である女性(妻)二人のエピソードを、一部割愛・編集の上、以下に紹介したい。

まずは、「運動部顧問の妻として出産前に思うこと」と題された、臨月中の妻の訴えである。

夫は、中学校教員で運動部の顧問をしています。平日は21時頃帰宅。ヘトヘトになって帰ってきて夜ご飯を食べてすぐに寝てしまいます。土日ももちろん部活で、半日部活でも平日に溜まった仕事をこなすため平日と同じくらい学校に残って仕事をします。

4月は1日たりとも夫に休みはありませんでした。夫婦の会話なんて事務連絡できたらいいくらいです。だってそんな時間ないのですから。

夫は子どもが大好きで、いい父親になると思います。しかし、部活による拘束でこれから産まれる子どもの話を夫婦でしたいのにできない。ベビー用品も一緒に見に行く時間もありません。4ヶ月前から何度も参加するチャンスがあった両親学級も、部活の大会、審判等により結局参加できませんでした。

夫を家庭に返して欲しい。私以外にもそんな思いをされている教員の家族の方がいるはずです。教員も、教員の家族も幸せに、当たり前に過ごすために、この声を上げ続け、部活問題を解決していきたいです。

出典:(はーみ/20代/中学校運動部顧問の妻、全文はこちら)

続けて、「顧問の家族から考える部活動」と題して、幼い子どもをもつ妻からの訴えである。

主人は、月火水木金は6:00に家を出ます。夜少しでも早く娘が寝る前に帰るために、業務を早朝にし、朝練をみて、授業し、部活が終わってから残りの業務をして帰ってきます。

土日も同じく6:00に家を出ます。部活の練習試合です。長期休暇中は強化合宿や遠征試合で数泊家を空けることも。

私が初めての子育てで余裕のない中、主人も激務と部活に付随する保護者の理不尽なクレームでどんどん疲弊していました。そして教員6年目にして心療内科にかかりました。それでも学校からは、次年度の担任と部活動主顧問を頼まれました。

私は「部活動顧問を断ってほしい、せめて一週間に一回は一日休んでほしい」と主人に再三伝えました。でも主人にもどうすることもできない部活動の慣例や制度の矛盾があります。悪いのは主人ではなく制度なのだから、責めちゃいけない。喧嘩したいわけじゃない。

我が家は肥大しすぎた部活動の在り方に大きな不安を抱いています。そして将来自分の子どもたちは、自分のための休養や家庭の時間を大切にできる先生のもとで学べる教育環境になっていてほしいと強く願います。

出典:(ふぁしこ@coupe303/20代/教員家族、全文はこちら)

読んでいて、胸が張り裂けそうになる。

夫は部活動のために休みなく働き、家庭を不在にする。まさに「部活未亡人」となりつつある現状に、妻たちは大きな不安を抱いている。

■若手の先生たちにおける過重な負担

年代別と運動部/文化部別の仕事量(拙著『ブラック部活動』より転載)

年代別と運動部/文化部別の仕事量(拙著『ブラック部活動』より転載)

声をあげた妻たちの年齢は若く、子どもの年齢も小さい。これは、ただの偶然ではない。

やや古い調査ではあるが、文部科学省の教員勤務実態調査(2006年度実施)は、若手の運動部顧問における過重負担をはっきりと示している。

たとえば中学校では、30歳以下の教員は30歳以上の教員に比べて、勤務日の残業や持ち帰り仕事の時間量が多い。また、運動部を担当する教員は、文化部顧問や顧問なしの教員に比べて、残業や持ち帰り仕事の時間量が多い。部活動指導においては、若手の運動部顧問にその負担が大きくのしかかっている。

■重大な問題として向き合っていくべき

2016年を「部活動改革元年」と位置づけ、部活動改革を主導する長沼豊氏(学習院大学・教授、元中学校教諭)は、昨年、私との対談で学校現場の切実さをこう語ってくれた。