こうすると患者たちはごく自然に自身の歩みを速めていくのだが、自らそうしようとしているという自覚がないので、患者の痛みや不安が増大することはない。

 人々がVRシステムをどのように認識し、VRシステムとどのようにやりとりするのかを研究することは、バーチャルリアリティのより優れたリハビリへの適用手法を考案するのに役立つ。

◆恐怖心・恐怖症

 もし、何らかの理不尽な恐怖に怯えている場合であれば、バーチャルリアリティでその実態を見せられるのは最も避けたい、と考えるかもしれない。しかし実はこれは医療分野でのVR治療で最も確立された治療法の1つだ。恐怖症の治療においては、療法士に導かれながら患者が自身の恐怖にゆっくりと時間を掛け、身を委ねていく段階的暴露療法と呼ばれる治療法がしばしば用いられる。バーチャルリアリティであれば各患者のニーズに正確に合致させた完全な調整を行い得るため、この療法にとってバーチャルリアリティは最適である。そして、病院でも家庭でも、どこでもこの療法を実施することができる。この療法は高所恐怖症クモに対する恐怖症を治療するために用いられるだけではなく、心的外傷後ストレス障害(PTSD)からの回復にも有効である。

◆認知リハビリテーション

 私たちは日頃当たり前のように買い物をし、週末の予定を決めたりしているが、脳卒中などの外傷や疾病によって脳に傷害のある患者は、そのような日常的な行動に関しても相当の苦労を強いられることが多い。バーチャルリアリティの中でそれらの行動を再現し、患者が自身に合わせてバーチャルリアリティの中で行動の複雑さのレベルを上げながら日常行動の練習ができるようになると、患者の回復は加速され、より高いレベルの認知機能を回復するのに役立つ。

 また、医師たちはこれら同一の仮想環境を評価ツールとして用い、現実的で複雑な様々なタスクを実行している患者を観察しながら、記憶の喪失、注意力の散逸、または意思決定の障害に関する脳の領域の特定につなげようとしている。

◆医師と看護師のためのトレーニング

 言うまでもなくバーチャルリアリティは患者たちのためだけのものではない。