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ミサイル防衛局は、7月初旬に「GMD」によるICBM迎撃実験を予定していましたが、それよりも先に「THAAD」による中距離弾道ミサイル(IRBM)迎撃実験を実施しました。

GMDの実験成績は芳しいものではありません。北朝鮮がICBM発射実験に成功したこのタイミングで万が一迎撃実験に失敗すれば、関係諸国にネガティブな政治的メッセージを与えてしまうことを米国は懸念したのかもしれません。THAADのIRBM迎撃実験自体は以前から計画されており、諸事情から延期されていました。

今回のTHAAD実験は、「北朝鮮ICBM実験に反応したものである」と世間に捉えられることを米国が自覚して(もしくは積極的に発信するために)実施したものだと愚考します。

初の中距離弾道ミサイル迎撃実験

THAAD Successfully Intercepts Target in Missile Defense Test(2017/7/11 ミサイル防衛局)
「FTT-18」はアラスカ州・コディアック試験場にて実施されました。標的ミサイルは中距離弾道ミサイル(IRBM)で、ハワイ北方沖上空のC-17輸送機から投下され、アラスカに配備されたTHAADシステムが探知、追跡し、迎撃に成功しました。

なお、今回標的となったIRBM級弾道ミサイルは、北朝鮮の「火星12」や「ムスダン」と同等のものです。

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THAADについてまとめたことがなかったので、簡単にメモしておきます。本稿が、ニュースを見たり読んだりする際の参考になれば幸いです。

THAADとは?

「THAAD」とは、Terminal High Altitude Area Defense system(終末高々度地域防空システム)の頭文字をとったもので、短距離弾道ミサイル~中距離弾道ミサイルを主に大気圏外(大気圏内でも可)で直撃による運動エネルギーで迎撃するシステムです。その名の通り、迎撃するのは弾道ミサイルの終末期で、いわゆるターミナル・フェイズです。

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ニュースなどを理解する上では、下の概念図のようにSM-3とPAC-3の間をTHAADがうめることで多層迎撃システムが構築される、というざっくりとした理解でいいと思います。

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THAADは、1個中隊を基本ユニットとして編成され、4つのコンポーネントから構成されます。
  1. 迎撃ミサイル:射程:200km、迎撃高度:40~150kmというあたりが公称値です。
  2. 移動車両式ランチャー:1個中隊で6~9両。1両につき迎撃ミサイル8発搭載です。
  3. AN/TPY-2レーダー:1個中隊につき1基。2種類のモードがあり、(1)ターミナルモード(射撃管制用):500~800km、(2)前方展開モード(早期警戒用):1,000~kmとみられます。モードの切り替えは8時間で切り替え可能とのこと(ハンギョレ)。
  4. 指揮・通信システム、発電車両など支援設備

米陸軍において現在6個中隊が運用中で、そのうち4個がテキサス州・フォートブリス基地に配備・訓練中で、1個がグアム、もう1個が韓国・星州へ展開しています。

AN/TPY-2レーダーは2006年に青森県・車力に配備されたのを初めとして、2008年にイスラエル・ネバティム空軍基地に、2011年にはEPAAの一環としてトルコに、2012年にカタールのアル・ウデイド航空基地、2013年にグアム、京都府・経ヶ岬など米本土外にも配備されています。

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ヘリテージ財団より引用。迎撃ミサイルの射程範囲とAN/TPY-2の探知範囲。)

優秀な実験成績

THAADは2006年に現在のコンフィギュレーションになって以降、THAADの迎撃実験はこれまで14回実施され、すべて成功。実験における迎撃率は100%(2017/7/11時点)と申し分のない実績を持っています。
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