だがその次の瞬間、職員らは慌ただしく部屋から出てきてドアを閉め、その場を去っていった。

日付が変わった25日1時ごろ、数人の職員がグエンさんの部屋に再び入っていった。部屋からはAED(自動体外式除細動器)の機械の音が漏れ聞こえてきた。しかし、職員がグエンさんに声掛けしている様子はなかったという。そのうち救急隊員もきて、グエンさんはストレッチャーでフロアに出された。

男性が食器口からのぞくと、グエンさんは、両腕を胸のあたりで曲げ、片足が斜め上に上がった状態で固まっていた。救急隊員が腕を引っ張って伸ばそうとしたが、硬直していてピクリとも動かなかった。男性は「死後硬直している」と思った。それでも救急隊員はグエンさんの胸に注射をし、心臓マッサージをほどこした。そして目の反応を確認し、死亡の診断がされたという。

男性はこう話す。「ずっと痛いと訴えていたのに、外の病院に連れて行ってもらえず、グエンさんは死んでしまった。本当にかわいそう。担当職員は私たちの言うことを『嘘の病気』と思うみたいです。グエンさんは、叫び声が聞こえなくなった24日20時ごろに死んだと思います。22時ごろに職員がグエンさんの部屋に入ってすぐ出たのは、グエンさんが死んでいたから逃げたんじゃないでしょうか」

男性はC型肝炎と肝硬変を患っているが、収容所の医師からは「ここに治る薬はない。外に出てから治しなさい」と言われたという。「この中にいる限り、人間の扱いは受けられない。こんなところで死にたくない」(同男性)

「詐病が多い」との偏見

入管側は、グエンさんの死因はくも膜下出血で、死亡時刻は25日2時20分ごろ、死亡の確認場所は病院だとしている。北村晃彦所長(4月より清水洋樹氏が新所長に)は発表時、「現時点で処遇に問題はなかった」とコメントした。

これに対して港町診療所(横浜市)の山村淳平医師は、「グエンさんが24日にこれまでにない強い痛みを訴えていたようなので、このとき、くも膜下出血の診断と緊急手術がなされれば助かった可能性はある」との見解だ。