「第二の『永田メール事件』になりはしないだろうか?」

 自民党の和田政宗参院議員は自らのブログで「仮に文科省内の人物が作ったとしてもメモ程度のもので、記憶違いもあるし、付け加えたり改ざんがいくらでも出来る」として、「第二の『永田メール事件』になりはしないだろうか?」と警告している(5月17日)。

 新藤宗幸千葉大名誉教授(行政学)は「(役所では)今回のように内部で情報を共有するためのメモ的な文書は頻繁に作られ、情報公開法の対象でもある。他の省庁とのやり取りを記録に残すのは役人の普通の行動だ」と指摘。国の「行政文書の管理に関するガイドライン」では、個人的な資料や下書き段階のメモであっても「国政上の重要な事項に係る意思決定が記録されている場合、行政文書として適切に保存すべき」と定められている(朝日新聞 5月18日)。

重要人物の萩生田官房副長官と義家文科副大臣の発言は?

萩生田光一 官房副長官
「本件について、ここまで詳しいやりとりをしたという記憶は私はございません」

FNNニュース 5月19日


荻生田官房副長官 ©山元茂樹/文藝春秋

 問題の文書の中に登場する重要人物が、学部設置の認可を判断する文部科学省の義家弘介副大臣と、萩生田光一官房副長官だ。

 5月18日、日刊ゲンダイが計8枚に及ぶ文書を全文公開している。文書によると、松野博一文科相からの「ご指示事項」には「教員確保や施設設備等の設置認可に必要な準備が整わない」として懸念が示され、「31年4月開学を目指した対応をすべき」と記されている。松野文科相は早期開学に否定的だったのだ。

「義家副大臣レク概要」と題された文書には、「平成30年4月開学で早くやれ、と言われても、手続きはちゃんと踏まないといけない」「やれと言うならやるが、閣内不一致(麻生財務大臣反対)をどうにかしてくれないと文科省が悪者になってしまう」と記されている。義家副大臣も松野文科相と同じく、早期開学には否定的だった。

「腹心の友」という首相発言が生まれたイベント

 ただし、義家氏と萩生田氏はここから事態を動かしていく。「10/4義家副大臣レク概要」と題された文書には、義家氏の言葉として「私が萩生田副長官のところに『ちゃんと調整してくれ』と言いに行く。アポ取りして正式に行こう。シナリオを書いてくれ」という一文が記されている。また、「10/7萩生田副長官ご発言概要」と題された文書には「平成30年4月は早い。無理だと思う。要するに、加計学園が誰も文句が言えないような良い提案をできるかどうかだな。構想をブラッシュアップしないといけない」と萩生田氏が語ったという一文が記されている。


義家弘介文科副大臣 ©桃園丈生/文藝春秋

 当初は誰しも否定的だった早期開学だったが、実現に向けて徐々に動き出していく様子が文書から窺える。そして、昨年11月に国家戦略特区の諮問会議で獣医学部の新設が52年ぶりに認められ、今年1月に加計学園によって今治市に新設される方針が正式に決定したという流れだ。

 18日、衆議院・農林水産委員会で野党からの追及を受けた義家氏、萩生田氏は文書の信ぴょう性が疑わしいと口を揃え、内容についても否定した。

 なお、加計学園が04年に開校した千葉科学大学の客員教授には、当時落選中だった萩生田氏や第一次安倍政権で首相秘書官を務めた井上義行氏らが名を連ねていた。この大学の開設にあたっても、今回の獣医学部と同様、銚子市から市有地を無償貸与された上、約78億円もの助成金を提供されている。先の「腹心の友」という言葉は、この大学の開学10周年式典の式辞で安倍首相が述べたものだ。

麻生副総理発言に見る「権力の構図」

麻生太郎 副総理兼財務大臣
「だから認可しなきゃよかった。俺は反対だったんだ」

『週刊文春』 4月27日号


麻生太郎副総理 ©山元茂樹/文藝春秋

 こちらは少し前の発言。文書の中には「閣内不一致(麻生財務大臣反対)」と記されていたが、国会で加計学園問題が追及されるようになってから、麻生副総理がこのように発言していたと『週刊文春』にて報じられている。安倍首相は麻生氏の発言に対して「あの人は分かっていないよ」と不満を露わにしていたという。

 麻生副総理が獣医学部新設に反対しているのは、獣医師の定員の問題がかかわっている。日本獣医師会が50年以上にわたって獣医学部新設に反対してきたのは、国内の獣医師は不足していないという見解に基づくものだ。そして、麻生氏は日本獣医師会とかかわりが深い。2013年に開催された日本獣医師会の蔵内勇夫会長就任記念祝賀会では、麻生氏が発起人を務めている。

 東洋経済オンラインでジャーナリストの安積明子氏は、加計学園問題の背後には「麻生vs.菅」の構図が見え隠れしていると指摘している。文書の中で松野文科相と萩生田副長官は、2016年10月23日の衆議院福岡6区補欠選挙の後で加計学園問題を処理するべきだと主張していた。このときは、鳩山邦夫衆議院議員の次男・二郎氏をかつて邦夫氏と交流があった菅義偉官房長官が応援し、麻生氏は対立候補の蔵内謙氏を応援していた。麻生氏は選対本部長に就任するほどの力の入れぶりだったが、蔵内謙氏の父が、県議を8期務めた蔵内勇夫県連会長である。先にも触れたとおり、蔵内氏は日本獣医師会の会長でもあるのだ。

 加計学園の獣医学部を新設したい安倍首相と菅官房長官、それに反対する麻生副総理と日本獣医師会という構図は確実だろう。文書の流出もそのあたりの文脈から発生しているのかもしれない。折しも麻生副総理は7月にも党内第2の規模となる新派閥を結成すると発表したばかり(産経新聞 5月15日)。「ポスト安倍」を見据えて影響力を拡大したい考えを持つ麻生氏が加計問題の鍵を握っている――?