結論としては、民主政の危機は続いているということになろうか。
5月7日に決選投票が行われたフランス大統領は、EU残留を主張するエマニュエル・マクロンが移民排斥やEU離脱など急進的な政策を訴える国民戦線のマリーヌ・ルペンをダブルスコアの大差で破り、39歳にしてフランス史上最も若い大統領に選ばれた。
結論としては、民主政の危機は続いているということになろうか。
5月7日に決選投票が行われたフランス大統領は、EU残留を主張するエマニュエル・マクロンが移民排斥やEU離脱など急進的な政策を訴える国民戦線のマリーヌ・ルペンをダブルスコアの大差で破り、39歳にしてフランス史上最も若い大統領に選ばれた。昨年のブレグジット、米大統領選と「サプライズ」な結果が続いていただけに世界が注目した選挙だったが、中道マクロンの勝利で反グローバリズム・ドミノは、とりあえず一息ついた形となった。
しかし、現実はとても楽観視できる状態ではないと、フランス政治に詳しい政治学者の吉田徹・北海道大学教授は言う。そもそも第一回投票で1位のマクロンの得票が24.01%だったのに対し、2位のルペンは21.3%の票を得ている。決選投票では「ルペンの当選を阻止する」という共通目的のために他の候補の支持票の大半がマクロンに流れた結果、形の上ではマクロンの圧勝となったが、マクロン票の相当部分は必ずしもマクロンの政策を支持しているわけではない同床異夢な消極支持票と考えていい。しかも、ドゴール以来、第五共和政の下でフランスの政治を担ってきた共和派と社会党の候補者がともに決選投票に進むこともできなかった。伝統あるフランスの民主政が大きな曲がり角を迎えていることは間違いない。
また、来月の11、18日の両日、フランスでは日本の国会にあたる国民議会の選挙が行われる(フランスは大統領選も議会選挙も2回投票制。1度目の投票の1、2位による決選投票が行われる)。既成政党の支持基盤を持たないマクロンも政治団体「前進!」を組織し独自候補の擁立を急ぐなど、議会選挙の準備を進めているが、如何せん急ごしらえの感は否めない。一方、「極右」と言われながらも父親の代から地道に不満層を吸収し、政治的地盤を固めてきた国民戦線は、経済的に取り残されているフランスの東部を中心に577議席中100~150議席を得る勢いだと吉田氏は言う。