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[写真]4月に初の首脳会談を行なったアメリカのトランプ大統領(右)と中国の習近平主席(ロイター/アフロ)

 トランプ米大統領は選挙期間中、中国は人民元の対ドルレートを低く誘導しているとやり玉に挙げ、大統領就任初日に「為替操作国」に認定すると公約していましたが、結局見送りました。しかし米国のリストでは、人民元だけではなく日本円も監視対象の通貨になっています。そもそもの中国の人民元政策を分析しながら、米国に対して日本はどう対応していくべきかについて、岡山大学経済学部の釣 雅雄教授に寄稿してもらいました。

【写真】中国は米雇用奪っていない、通貨安誘導していない トランプ大統領の誤認

選挙中に問題視したが認定は見送り

 トランプ米大統領が大統領に就任してから4月29日で100日となった。トランプ大統領はこの「ハネムーン期間」で、TPPからの離脱、一部のイスラム圏国民の入国禁止令、シリア空爆など、その賛否は別として、選挙中に掲げた公約を実行に移そうとしてきた。一方で、中国に対する「為替操作国」の認定は見送られた。経済政策の視点からみると、中国の人民元は対ドルで安いとは言えず、そもそも為替操作国に認定されるような状況にはなかった。にもかかわらず、トランプ大統領は公約し、そして、北朝鮮問題で協力関係があるからと今度は見送ったのである。

「北朝鮮問題で協力しているときに、中国を為替操作国に認定するはずがない。」("Why would I call China a currency manipulator when they are working with us on the North Korean problem? We will see what happens!" 2017年4月16日、トランプ大統領のツイッターでの発言)

 トランプ米大統領には経済政策を、場合によっては外交と一体化して、戦略的に決めているという面がみられる。今後日本との関係でも同様に戦略的な要求がなされたとすると、日本にとって、どのような問題が生じるであろうか。中国の為替操作国認定をしなかったことが、どういうことかを知るとともに、その日本へ示唆を考える。

そもそも認定される状況になかった中国

 米財務省は「米国為替報告書」(Foreign Exchange Policies of Major Trading Partners of the United States)において、特に米国の通商政策に影響するような為替レートなどの動きを示す国を「監視対象通貨リスト」(Currencies Of Monitoring List)として指定している。今年4月の報告書でそのリストにあるのは、日本円、中国人民元、台湾ドル、韓国ウォン、スイスフラン、それに加えてドイツ(ユーロ)である。これらの国の政策と通貨の状況が報告書としてまとめられている。

 監視対象の基準は3つあり、(1)200億ドルを超える巨額な米国との貿易収支黒字、(2)対GDP比3%超の大幅な経常収支赤字、(3)対GDP比2%規模の継続的でかつ通貨安への一方的な為替介入、である。

 同報告書の表2(Table 2)に、各国のこれらの基準値の状況がまとめられており、今回、3つすべての基準を超える通貨はないが、2つの基準に達しているのが、日本、ドイツ、韓国、スイスである。特に重要だと思われる通貨安介入の基準については、このうちスイスのみが当てはまる。

 中国は(1)の基準が超えているだけだが、監視対象通貨リストに含まれている。対米貿易黒字額が3470億ドルと規模が大きいためである。次に大きい日本の689億ドルと比較するとその大きさが分かる。ただ、現在の基準ではこの1項目のみなので、中国は為替操作国に認定される状況にはない。