テロ等準備罪(共謀罪)について様々な意見が挙がる中、前回は訳分からんという方のためにできる限り法案を分かりやすく記載しつつ、あまりにもひどいデマ関係について反駁を記載した。 前回の投稿はこちら→ 「テロ等準備罪を分かりやすく解説

国会内だけでなく、出来る限り国会の外でも議論を喚起していきたいので、引き続き、しばらくテロ等準備罪についてブログを書いていきます。

今回は「現代ビジネス」のHPにUPされた、下記の高山佳奈子京都大学教授の意見について反駁や論点整理。

もし「共謀罪」が成立したら、私たちはどうなるか【全国民必読】http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51376

全国民必読(?)ということで、また、私が政府に確認した主意書についても記載されているということで、これは読まないわけにはいかないと早速読ませていただいた。さすが論文もよく書かれる京大教授、いままでの「とりあえず何でも反対の出鱈目意見」よりもだいぶ整理されているし、もっともだという点もある。

ただ、それはどうだろうかという部分が多々あるのでそれらについて以下記載。何度も書くがいずれにしろ、こうした様々なところでの国民的議論を喚起しつつ、今国会できっちり議論しなければならない。(それゆえに、一部野党の審議入りすら拒否する、また、デマをもとにレッテル張りばかりする方々の姿勢には辟易するが。)

高山教授の論考全文は上記のリンク先をご覧ください。また、前回よりだいぶ内容が細かくなるので、まず「法案の中身もあまり分からないや」という方は前回の投稿「テロ等準備罪を分かりやすく解説」をご覧ください。

下記から、論考の主要部分を左横線付きで引用後、その直下の「→」以下にて、丸山の反駁(重要部分を下線)。

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与党は、同法案が過去のものと異なる点を強調しようとしているが、対象犯罪の数が限定された以外に、実質的な相違はない。

→ 「実質的な」がどこまでのことを言うのかにより見解は分かれるが、相違はないという言葉で表現できるほどそこまで同じではないのでは。記載のように対象犯罪が大幅に絞り込まれていることに加えて、その他の要件も、例えば、これまでの共謀罪法案は共謀のみであったが、

それとは異なり今回のは具体的な計画と、更に準備行為が必要。また対象となる組織も犯罪実行を主目的でなければ対象にならないなど、更に厳格化されている。

その内容は、政府が締結を目指すとされる国連国際組織犯罪防止条約との関係では共謀罪処罰そのものであり、日本語でいかなる名称を付けようともこれが共謀罪法案であることには変わりがない。

→ もし名前自体にこだわるのは無意味という一義的な意味なら同意見。法の中身が重要で略称はどちらでもよい話。内容を指すならこれまでの共謀罪法案とは上記の理由で異なる。その政治的思惑やレッテル張りから、賛成派はなぜか「テロ等準備罪」の方に、反対派は「共謀罪」の方にこだわるが。なお、正式名称は「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」。

政府は、本法案を「テロ等準備罪」を処罰するものだとし、首相は、これがなければオリンピックを開催できないといっても過言ではない旨を述べていた。しかし、法案の中には、テロのための条文は1ヵ条も存在していない。適用対象の条項に「テロリズム集団その他」が付け加えられたが、「その他」の文言からも明らかなように、テロが除外されないことが示されているだけで、ほぼ無意味な挿入である。( ~長いので間略~ )オリンピック・パラリンピックの東京開催が決まった2013年までの間に、政府の犯罪対策計画においてオリンピックのための共謀罪立法が論じられたことはなく、共謀罪立法がテロ対策の一環として位置づけられたこともないという事実が明らかになっている。

→ 総理発言の一部の言葉尻をとらえて、且つ、だいぶ内容の省かれての批判なので忖度すると、おそらくテロの取り締まりを理由にしながら実質はそうなっていない、との考えからの主張だと推察するが、まず、今回の法案、第一にテロ対策は一部でそれのみが対象ではないと政府も言っている。

テロの危険性への対応も最大級に必要だが(だからの一番上の例示なのでは?)その他の組織的犯罪集団も取り締まらなければならないでしょという法の趣旨。 ただ、与党審査段階で無理矢理付けた「テロリスト集団その他の」文言自体の無意味さの指摘は当然あるかと。ただし、政府も「テロリスト集団その他の」というのはあくまでも例示だと答弁。例示を無意味と考えるかは意見が両論分かれるが、その有り無しで法の主要要件が変わるわけではない。

政府は丸山の主意書答弁にて、「その他」については暴力団、麻薬密売組織などと更に追加例示している。また「など」がどこまでもあるじゃないかという批判があるだろうが、最終的には「など」を入れず集団を完全に形式的に定めるのは現実的ではない。またオリンピックも控える中で取り締まりをきちんとやるべきというのは何も論理矛盾していない。

こうした「テロ対策と言いながら実質テロの定義も云々」という反対意見をよく見るが、そもそもの主要な立法事実は、TOC条約の批准の必要性であり、つまり、法を作り条約を批准することで外交ルートである外務省同士を経由しての遅い情報やり取りでなく、捜査機関同士で直に迅速に組織犯罪集団の情報をやり取りできるようになることで、テロなどの事前取り締まりを強化するというもの。

これは、この法案でのテロを含む組織犯罪集団への「直接の」取締りとともに重要な政府の論理構成。(ちなみにテロリストの定義も過去政府は様々ところでしているかと。)この法律のみを切り取ってテロ対策にならないというのはその重要な情報のやり取り等の理由を省きすぎている。ちなみに指摘の2013年より前にも具体的な法案が提案されたり、民主党政権時の2011年にも法務大臣が必要性を主張されていますよ。

日本にはすでに予備罪や抽象的危険犯の広範な処罰規定があることから、国連条約締結のために共謀罪立法は必要ないと考えられる上に、2004年に国連から各国向けに出された公式の「立法ガイド」にも、共謀罪処罰の導入は義務でないと明示されている。

→ 「日本にはすでに予備罪が云々」については簡単に言えば、我が国の現行法は条約第5条の義務を充たしていない。これについては以下の法務省見解が詳しいので割愛。

http://www.moj.go.jp/keiji1/keiji_keiji35-2.html

 後段はよく言われる立法ガイド51パラグラフの「without ~ either 」の論点かと。条約の条文と立法ガイドの補足が食い違っているので、外務省が「立法ガイド」を作成した国連薬物犯罪事務所(UNODC)に対してこのパラグラフの趣旨につき確認したところ、同パラグラフは共謀罪及び参加罪の双方とも必要でないことを意味するものではない、との回答を得ている。つまり立法ガイドの方が違うでしょということ。国際法の立て付けとしても、立法ガイドの説明より、義務付けているとしか読めない条約の本文が優先されるのはいうまでもないのでは。

実際、条約締結のために共謀罪立法を行った国としては、ノルウェーとブルガリアの2ヵ国しか知られていない。

→ これはよく見る印象操作。むしろ他国の状態を言ってしまうと、日本の立法が遅れているということに。2ヵ国しかないのではなく、この条約締結のために「新しく」作った国は2ヵ国ということですよね。(2ヵ国もあくまでも外務省が調べられた範囲だが。187ヵ国という世界の殆どの国が結んでいる中で、様々な国情もある中で報告ベースにて、すべての国を調べるのは限界があるのは言うまでもない。)つまり、それ以外の多くの国は合意罪か参加罪が、条約締結前からあるということ。全ての国については残念ながら分からないが、例えばOECD諸国35ヵ国だと、日本を除く全ての国において、どちらかの罪が国内法にある。(OECDのうち30ヵ国は条約締結前に共謀罪か参加罪があり、追加の法整備をしていない。条約締結に伴う国内法新設は合意罪ノルウェー1ヵ国、参加罪オーストリア、カナダ、ニュージーランド3ヵ国。残りの1ヵ国、法律もなく、条約も批准できていないのが日本。)