しかし、なかなかリスクへの警戒を緩めることはできなかった。

それでもいち早く正常化路線を歩んだFRBがそのペースを速めつつある。EU離脱という選択をした英国も混乱は一時的となり、むしろポンド安で物価は上昇し、株価も上昇した。イングランド銀行も中立姿勢に戻しつつあり、正常化にむけたタイミングを計っている。日銀と同様に緩和政策に前傾姿勢をとっていたECBも、ここにきてやっと中立姿勢に戻そうとしつつある。そのなかにあって日銀だけがいつまでも非常時の体制を維持し、かなり無理な緩和策を継続し、緩和に前向きな姿勢を崩そうとしていない。

中央銀行の金融政策で物価を能動的に動かすことはかなり困難であることは、日銀の異次元緩和の進み方と物価の動向を重ねれば明らかで、それならば今度は財政でというような妙な意見まで出ている。それほど無理を重ねて物価を上げようとする前に、なぜ日本の物価は上がりづらいのか。日銀が目標としている消費者物価をあらためて分析する必要もあるのではなかろうか。といってもこれは日銀が実は一番良くわかっている問題でもあり釈迦に説法か。日銀自体、大量に長い期間の国債を買うことで物価が上がるというロジックは通用しないことはわかっていたはずである。

ここにきての欧米の物価上昇も中央銀行の金融緩和が効いているというよりも、世界的なリスクの後退により景気そのものが回復し、心配された新興国経済も思いの外しっかりしていること、そこに原油価格の上昇も影響して生じたものと言えよう。

世界的な潜在リスクは当然、いつも存在する。しかし、現実のリスクそのものは金融市場を見る限り後退しているなかで、中央銀行の金融政策だけが異次元のまま非常時の対応が続けられることに違和感はないのか。違和感だけで済めば良いが、それがいずれマーケットの歪みを生む懸念もありうるのではないか。