『ラ・ラ・ランド』が圧倒的な強さで賞レースを独占するのか? 映画評論家ピーター・トラヴァースが、誰が今年のオスカーを獲得するのか、誰が栄光を手にすべきか、部門ごとに予想する。

戦いの幕が切って落とされた。ハリウッドで夢を見る白人カップルを描いたミュージカル・ファンタジー『ラ・ラ・ランド』か、黒人の若者がマイアミのストリートで生き抜いていく姿を描いた情熱的なドラマ『ムーンライト』か。この戦いからは、“多様性”に対するオスカーの真剣度が見て取れる。俳優部門に黒人が一人もノミネートされなかったアカデミー賞から2年が経ち、今年は7人の有色人種がノミネートされた。マハーシャラ・アリ、ビオラ・デイビス、ナオミ・ハリス、ルース・ネッガ、デブ・パテル、オクタビア・スペンサー、デンゼル・ワシントンである。

「あら、今年は去年と違うのね」と、アフリカ系アメリカ人の米映画芸術科学アカデミー会長シェリル・ブーン・アイザックスは、今年のオスカー候補者が集った昼食会の挨拶で語っていた。しかし結論を出すのはまだ早い。この兆候は続くのだろうか、それが本当の課題である。罪悪感にまみれたアカデミーの白人会員たちは今年、世間の目を気にして候補者選びをしたのだろうか? 来年はいつも通り、ビジネス主体の体制に戻るのだろうか? 

そんな中、吉報もある。アイザックスは自身の発言を裏打ちするように、683人の新会員(そのうち46%は女性で、41%は有色人種)をアカデミーに迎え入れたのだ。このような“多様性”を求める動きは、物議を醸している政策、ドナルド・トランプ大統領によるイスラム圏の国々に対する渡航禁止令によって猛攻撃を受けているのだから。

才能を評価するにあたり、人種や肌の色、宗教、性別は関係あるのだろうか? それはあまりにも極端ではないだろうか? あなた自身で見極めてほしい。今年のアカデミー会員による投票は、これまでにもなく政治色の強いものだったであろう。オスカーを勝ち取る者は、ただその栄光を手にするだけではなく、きちんと意思表明をしなければならない。オスカーを予想する時には、そのことも頭に入れておきたい。さあ、ゲームの始まりだ。

<作品賞>
『メッセージ』
『Fences』
『ハクソー・リッジ』
『最後の追跡』
『Hidden Figures』
『ラ・ラ・ランド』
『LION ライオン 25年目のただいま』
『マンチェスター・バイ・ザ・シー』
『ムーンライト』

#OscarsSoWhite(白人だらけのオスカー)のことは忘れよう。あれは去年のことだ。2017年の作品賞は、9作品のノミネートのうち4作品(『Fences』『Hidden Figures』『LION ライオン 25年目のただいま』『ムーンライト』)が有色人種の人々を描いた作品である。さらに4つの各俳優賞部門で、少なくとも一人は黒人の俳優がノミネートしている。これは、90年のアカデミーの歴史の中でもかなり画期的なことである。

『ラ・ラ・ランド』は最も白人色の強い作品(『マンチェスター・バイ・ザ・シー』も同等)で、アカデミー史上最多ノミネート数、『イヴの総て』(50)、『タイタニック』(97)と並ぶ14部門へのノミネートを達成している。32歳の新鋭デイミアン・チャゼルの傑作『ラ・ラ・ランド』を打倒できるとしたら、それは『ムーンライト』しかないだろう。8部門にノミネートされた『ムーンライト』は、マイアミの貧困地帯に暮らすアフリカ系アメリカ人のゲイの青年の人生を3つのステージを通して描いた作品で、37歳の気鋭バリー・ジェンキンス監督による情熱と想像力に富んだ作品だ。『Hidden Figures』の大奮闘も無視し難いが、注目すべき2作品は下記である。

本命:『ラ・ラ・ランド』
番狂わせ:『ムーンライト』


『ラ・ラ・ランド』(C) 2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
Photo credit: EW0001: Sebastian (Ryan Gosling) and Mia (Emma Stone) in LA LA LAND. Photo courtesy of Lionsgate.


<主演男優賞>
ケイシー・アフレック『マンチェスター・バイ・ザ・シー』
アンドリュー・ガーフィールド『ハクソー・リッジ』
ライアン・ゴズリング『ラ・ラ・ランド』
ヴィゴ・モーテンセン『はじまりへの旅』
デンゼル・ワシントン『Fences』

ベン・アフレックの弟ケイシー・アフレックは、マンチェスターに暮らす便利屋を悲哀たっぷりに演じ、これまで主なオスカー前哨戦を制して来た。

本命:ケイシー・アフレック
番狂わせ:デンゼル・ワシントン


『マンチェスター・バイ・ザ・シー』のケイシー・アフレック。(C)2016 K Films Manchester LLC. All Rights Reserved.

<主演女優賞>
イザベル・ユペール『Elle』
ルース・ネッガ『ラビング 愛という名前のふたり』
ナタリー・ポートマン『ジャッキー ファーストレディ 最後の使命』
エマ・ストーン『ラ・ラ・ランド』
メリル・ストリープ『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』

メリル・ストリープは今年で20回目のノミネートを果たしており、アカデミーはそろそろ彼女のための新部門、「女神」を新設すべきではないだろうか。この部門は、あらゆる俳優が抱える葛藤を気品と根性で演じた『ラ・ラ・ランド』のエマ・ストーンと、ジョン・F・ケネディの元大統領夫人を見事に体現した『ジャッキー ファーストレディ 最後の使命』のナタリー・ポートマンの一騎打ちになるだろう。

本命:エマ・ストーン
番狂わせ:イザベル・ユペール


『ラ・ラ・ランド』のエマ・ストーン。(C) 2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
Photo credit: EW0001: Sebastian (Ryan Gosling) and Mia (Emma Stone) in LA LA LAND. Photo courtesy of Lionsgate.


<助演男優賞>
マハーシャラ・アリ『ムーンライト』
ジェフ・ブリッジス『最後の追跡』
ルーカス・ヘッジズ『マンチェスター・バイ・ザ・シー』
デブ・パテル『LION ライオン 25年目のただいま』
マイケル・シャノン『Nocturnal Animals』

この部門の最年少は、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』で力強い熱演を見せた若干20歳のルーカス・ヘッジズ。一方、67歳のジェフ・ブリッジスも、20歳前後の時に『ラスト・ショー』(71)で初めてオスカーにノミネートされた。このベテランは、今年は『最後の追跡』で狡猾なテキサス・レンジャーを演じている。

本命:マハーシャラ・アリ
番狂わせ:他の候補は考えられない。今年はアリが獲るだろう。


『ムーンライト』のマハーシャラ・アリ。(C)2016 A24 Distribution, LLC

<助演女優賞>
ビオラ・デイビス『Fences』
ナオミ・ハリス『ムーンライト』
ニコール・キッドマン『LION ライオン 25年目のただいま』
オクタビア・スペンサー『Hidden Figures』
ミシェル・ウィリアムズ『マンチェスター・バイ・ザ・シー』

三人の素晴らしい黒人女性(ビオラ・デイビス、ナオミ・ハリス、オクタビア・スペンサー)が同じ部門で競り合うことは、オスカー史上、かなり画期的なことである。

本命:ビオラ・デイビス
番狂わせ:ミシェル・ウィリアムズ


『マンチェスター・バイ・ザ・シー』のミシェル・ウィリアムズ。(C)2016 K Films Manchester LLC. All Rights Reserved.