今日の横浜北部は昨日に比べて随分と気温が下がりました。晴れておりましたが全体的にもやがかかっているような感じでした。

さて、連日お伝えしているバノンと拙訳「フォース・ターニング」についての話ですが、トランプ政権誕生の直後にバノンの映画の出演者であるカイザー教授による意見記事がタイム誌に掲載されておりましたので、あらためのその要約を。

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トランプ、バノン、そして米国における危機の到来

by デイヴィッド・カイザー

1990年代にニール・ハウと故ウィリアム・ストラウスという2人のアマチュアの歴史家が、米国史についての新しい理論を2冊の本の中で提唱した。

最初が1991年に出た『世代:米国の未来の歴史』(Generations: the History of America’s Future)であり、次が97年の『フォース・ターニング:米国の預言』(The Fourth Turning: An American Prophecy)である。

そして2人は米国史における80年のサイクルを指摘し、それが古い秩序を破壊して新しい秩序をつくる、大きな危機によって区切られていると主張したのだ。

彼らの理論は大学で広く教えられているわけではないし、メディアでも議論されているようなものではないのだが、それでもトランプ政権では大きな役割を果たす可能性が大きい

なぜならブレイトバートニュースというサイトの元代表でトランプ政権の首席戦略家に任命されたスティーブン・バノンは、ストラウスとハウの危機の理論について詳しく、しかもそれを使って特定の目標をどうやって達成しようかを長年に渡って考え続けてきた人物だからだ。

私がなぜこのようなことを知っているのかというと、バノンはドキュメンタリー映画を制作する際にニール・ハウとこの私に、当時進行していた金融危機に関して2009年にインタビューを行ったからだ。

この映画は「ジェネレーション・ゼロ」というタイトルで、その中でその「危機の理論」がかなり詳しく議論されている。

バノンはこの理論の最大のカギとなる、米国史は80年毎に「危機」、もしくは「第四の節目」(フォース・ターニング)を迎えており、これによって古い秩序が破壊されて新しい秩序が確立される、という考えに焦点を当てている。

ストラウスとハウによって指摘された大きな「危機」には、アメリカの独立戦争から憲法制定までの時代(1774-1794)、南北戦争とその後までの時代(1860-68)、そして世界恐慌から第二次世界大戦までの時代(1929-45)が含まれている。

このような経緯を踏まえて、彼らは21世紀の最初の15年に同じような大きな危機がくると予測している。

ストラウスとハウの主な予測はあきらかに実現している。たとえばアメリカが政治的な危機の状態を迎えてかなりの時が経過したことを否定する人はいないだろう。これは党派による分断状態や、深刻な不景気、海外での戦争、そしてとりわけ政治エスタブリッシュメントと国家との結びつきが崩壊していることなどだ。

私はプロの歴史家の中でも、ストラウスとハウの研究に興味を示した数少ない人間の一人であった。そして彼らの知見を、自分が書いたベトナム戦争の原因についての著作や、第2次世界大戦への参戦におけるフランクリン・ルーズベルトの役割についての本に応用している。

また、私は彼らの理論を自身のヨーロッパの歴史や現状についての分析にも応用している。

正直に言わなければならないが、私は市民連合という保守派団体のために働いていたバノンが私にインタビューを申し込んできた時に、それが何を意味しているのかはよくわからなかった。

それでもストラウスとハウのアイディアや、迫りつつあった「危機」について議論するチャンスはめったにないので、私はこのインタビューを歓迎したことを覚えている。

バノンは知的でカリスマ的な人物であり、私自身と同様に彼も明らかに私へのインタビューを楽しんでいたようだ。完成した映画を見たが、彼は私のインタビューを、自身の極右的な立場に有利になるようなバイアスがかった形ではなく、完全に公平な形で使ってくれた

ストラウスとハウの「危機の理論」の強みは、それが特定のイデオロギーに染まっていないという点にある。私の解釈によれば、それまでの政治・経済・社会の秩序の崩壊は、新たなビジョンを定着させるために、決定的なムーヴメントやリーダーを生み出すチャンスを創出する、ということになる。

最もわかりやすい極端な例を使えば、1933年当時のアメリカとドイツは、両国とも恐るべき経済・政治面での危機に直面していたが、アメリカはフランクリン・ルーズベルトとニューディール政策、ドイツはアドルフ・ヒトラーとナチスにそれぞれ活路を見出したということだ。

バノンと私が会った2009年の頃、私はオバマ大統領と民主党が多数派の連邦議会がリーマンショックによる経済危機を契機としてニューディール政策の価値を復活させるのではないかと期待していた。もちろんバノンは危機がどうなるのかについては私とは別の考え方をもっていたことは明らかだ。

結果的に、オバマ大統領は「新たなニューディール政策」を打ち出すことはできなかった。彼はわれわれのシステムが根本的に間違っているわけではなく、微調整によって修復できるものと考えていたようなのだ。

政権末期になってオバマ大統領はニューヨーカー誌のデイヴィッド・レムニックへのインタビューにおいて、大統領というものは米国社会を造る変えるようなことはできないし、わざわざ造り替える必要もなかったと述べている。

ここに、リンカーンやフランクリン・ルーズベルト、そして今日の共和党との決定的な違いがある。共和党は、私の意見では早ければ2000年の頃から、現在の危機において主導する立場を得て、それ維持している。その理由はまさに共和党こそが革命的な変化を起こすことを目指す党であり、民主党は実質的に「現状維持を目指す党」になっているからだ。

もちろん現在の共和党のスタンスというのは、ニュート・ギングリッジが政治活動を始めた1980年代に遡る(ちなみにギングリッジはジェネレーション・ゼロの中で長いインタビューを使われており、トランプ政権でも高い地位につくと見られている。国務省長官の候補者であったジョン・ボルトンも映画でインタビューされている)。

現在の下院議長であるポール・ライアンは、メディケアと米国年金制度を破棄しようと長年考えていた人物であり、それを実行するチャンスはいまや到来したと言える。