アメリカの大学の裏側 「世界最高水準」は危機にあるのか? (朝日新書)

アメリカの大学の裏側 「世界最高水準」は危機にあるのか? (朝日新書)


Kindle版もあります。

アメリカの大学の裏側 「世界最高水準」は危機にあるのか? (朝日新書)

アメリカの大学の裏側 「世界最高水準」は危機にあるのか? (朝日新書)

内容紹介
管理職が手にする報酬5億円! 中退率50パーセント! アメリカの大学改革をまねし続ける日本の教育界はこの実態を知っているのか? 巨大格差を「再生産」する驚愕の実態を在米20年以上の現役大学教員が徹底リポート。竹内洋氏との初の親子共著。
 「文系軽視」や「リベラル・アーツ教育の衰退」など、日本の大学の「問題点」が語られることは多いのです。
 では、アメリカの大学は、いま、どうなっているのか?
 先日の大統領選挙で、民主党のバーニー・サンダース候補が「公立大学の無償化」を公約にして、学資ローンに悩む若者から高い支持を得ていたことからも、「教育とお金」はアメリカでも大きな問題となっていることがわかります。
 この新書は、アメリカの大学で働いている著者による「アメリカの大学の現状報告」なのです。
 アメリカ人は大学教授にあまりいい印象を持っていないようである。
 私はその大学教授のひとりで、現在ウィスコンシン大学ミルウォーキー校で日本の准教授にあたるアソシエイト・プロフェッサーをしている。私は「テニュア」なるものを持っているが、これがアメリカで大学教授に風当たりの強い一因である。テニュアは大学教授の終身雇用をほぼ約束する制度である。「ほぼ」というのはあまりにひどいセクハラや重い犯罪を犯した時にはテニュアも威力を失うからである。

しかしテニュア付の教授で解雇になるのは毎年たった2%ほどである。対照的にアメリカの一般企業などでは解雇が日常茶飯事に行われる。せっかく正規の社員として就職したのに翌月にまた無職に舞い戻る人も多い。雇用の不安定なアメリカではテニュアは特権階級的にとられるのも否めない。
 アメリカの大学では、この「ほぼ終身雇用契約」である「テニュア」を得るための激しい争いが繰り広げられているのです。
 一度これを得ることができれば、ある程度その後の収入や身分が保証されるけれど、これがなければ、「高学歴ワーキングプア」方面へ。

 ただし、この「テニュア」の有無の格差があまりにも大きすぎるために、これを得てしまうと、燃え尽きたようにその後の研究をやらなくなってしまう人も多いのだとか。
 アメリカでは、ある人を公募で雇用する際に、その配偶者も同時に雇用するというシステムも存在しているそうです。

 配偶者雇用は1970年代には大学教授の雇用の3%ほどだったが、2000年代には13%まで増えている。アカデミック・カップルにとって配偶者雇用はもちろんありがたい制度であるが、大学側にとっても効用がある。配偶者雇用は優秀な人材を獲得する手段でもあるからだ。優秀な研究者はオファーを複数の大学から同時に受けることは珍しくない。その中から一番よい条件のオファーを吟味して選ぶという贅沢なことができる。

大学の格、給与や授業コマ数も大事だが、配偶者が研究者の場合には配偶者雇用は重要な決め手になる。名門大学から高給与のオファーがあったとしても、その大学で配偶者雇用ができなければ、配偶者のことも考えて格下大学でも二人一緒に雇ってくれる大学に決めることがありうるからだ。だからアメリカでは非名門大学に高名な学者がいることも少なくない。

 田舎やあまり人気のない州や町にある大学などは敬遠されがちなので配偶者雇用によって人材確保を頻繁に行う大学もある。

 日本で働いている僕からすると、「配偶者雇用って、雇うほうも大変なんじゃないか」と思うのですが、格下大学が優秀な人材を確保するための武器にもなりうる、ということなんですね。