2017年新年早々、電気自動車(EV)のベンチャー、テスラ・モーターズとパナソニックが共同出資した新電池工場「ギガファクトリー」の開所式が話題になった。今年のテスラのモデル3の発売とともに、EVの普及がさらに加速するという見方が強い。

一方で電力の供給が需要に追いつかず計画停電が頻繁にあるという南アフリカの「ビッグイシュー南アフリカ」から、電気自動車導入を考察する記事が届いたのでご紹介したい。果たして電気自動車にに未来はあるのだろうか?

電気自動車のブームが南アフリカにも上陸しようとしているが、その気配は感じない

そう、文字通り静かなのだ。電気自動車はその静かさ故の悪評もあるがそれが原因であろうか。

私たちが運転しているガソリンやディーゼル燃料の自動車とは異なり、電気自動車(EV)は運転中ほとんど音がしない。多くの人に取ってそれは電気自動車の魅力である。電気自動車は音の公害を減らし、炭素放出量とランニングコストを非常に低く抑える。

しかし他の多くの人々にとって、電気自動車の音の出ない走行は問題となり得る。昨年の英国のチャリティ団体である「ガイドドッグ」の報告によると、2012年〜2013年の間に「静かな」自動車が関係する歩行者の怪我は54%増加したという。この報告によると、ガソリンやディーゼル自動車に比べ横断中の歩行者がEV車やサイレント・ハイブリッドカーに轢かれる可能性は40%高いという。

ガイドドッグのマネージャーであるジェームズ・ホワイト氏は言う。
〝静かな自動車″は、学校の周囲や住宅街、私たちの街や市で歩行者を危険にさらしています。政府は年間何百万ポンドものお金を使い静かな車を道路に増やそうとしています。この環境に優しい自動車の発展を支援するのはよいですが、もっと歩行者の安全の保護にも目を向けるべきです。
「静かな殺人鬼!」という避けようのない見出しがメディアを賑わせると、怯えた世界中の規制機関は今、自動車会社に音が出る機器を電気自動車に付属させるという法令を押し進めている。信じられないが本当の話である。
簡潔に言えば、これが電気自動車についてよく聞く話だ。
電気自動車は新しく、刺激的で、環境に優しい。まだ身近ではない為に、横断歩道のない場所で道路を横切る一般の歩行者達からはいかぶりの目で見られ、規制側にとっては悪夢のような書類仕事の山をつくりだす存在だ。

フェラーリの会長であるセルジオ・マルキオンネ氏は電気自動車が好きではない。2016年のジュネーブ・モーターショーで記者が電気だけで動くフェラーリの実現の可能性を聞いたところ、マルキオンネ氏は咳払いをしてこう言った「非常に不愉快な考え方だ。(それが実現させるには、)最初に私を撃ち殺してからにしてくれたまえ。」
考えてみれば、フェラーリは唸りをあげるV12エンジンや静かさとは正反対のカヴァリノ・ランパンテ(踊り跳ねる馬)のロゴで知られている。マルキオンネ氏がそのように語るのは当然のことだ。

従来型の自動車のファンであれば電気自動車の事を少しは疑心暗鬼の目で見るだろう。2013年10月に、テスラの電気自動車モデルSがワシントン州の高速の瓦礫に衝突し炎上した際、間違いなく他人の不幸を喜んでいるささやき声が聞こえた。テスラは火の元がバッテリーパックだったいうことを認めた。ナスダック株式市場でのテスラの株価は当日に 6.24%下落し、火をあげる車の動画がYouTubeにアップされ拡散された翌日にはさらに4%下落した。

けれどもこの最新技術に対する恐れがEV車の驚くべき成長を妨げているという事はない。技術が向上し価格が次第に下がっていく中で、電気自動車の市場は成長しているのだ。(注意:「次第に安くなっている」とは言っていない。詳しくは後述。)

例えば、今日本にはガソリンスタンドよりもEV車充電ポイントの方が多い。日産による直近の調べによると、全国のガソリンスタンド数が3万5千店以下なのに対してEV車のオーナーが自動車をプラグイン充電できる場所は4万カ所以上あると言う。その多くが個人所有のものではあるのだが。

2016年5月には米国、中国、日本に次いで4番目にノルウェイがEV車の販売数10万台を成し遂げた。米国では現在約45万台の電気自動車が道路を走っており、中国は約30万台、日本ではおおよそ15万台の電気自動車が走っている。

世界的にはBMWが昨年、EV車とハイブリッド車が4月の販売数全体の2.5%を占めたと発表し、イギリスの政府のデータによると2016年の電気自動車の販売数は前年比120%の勢いで上昇しているということだ、それに比べ従来型の自動車の販売率はたった2%の上昇である。

英国日産の電気自動車担当マネージャーであるエドワード・ジョネス氏は言う。
毎年、何千ものドライバーが電気自動車の機能、性能、信頼性を見て、乗り換えを行ってきたのを見て来た。現在の電気自動車の種類が日々の運転のニーズの90%以上に答えていることから、英国はEV車のマス市場参入という転換期に来たと言えるだろう。


国家で一斉停電を行うような国、南アフリカで電気自動車が受け入れられるか?

送電停止が国家的な謳い文句である国において、電気自動車の市場は存在するのだろうか?もうすぐそれが判明する。電気自動車のデザインと製造の世界的リーダーと広く見なされてきたテスラ・モーターズは、最新の電気自動車のモデル3がインド、ブラジル、ニュージーランドそして南アフリカでまもなく発売されるということを2016年4月に発表した。

__________720


これは大きなニュースである。南アフリカの市場には既にBMW i3 と日産リーフという2台の電気自動車が存在する。けれども電気自動車のみを扱う会社が市場に参入するのは始めての事だ。それ以上に、モデル3というのはEV専門メーカーであるテスラがより安価な価格帯のマス市場をターゲットに送り出した自動車である。導入奨励金などを考慮する前の価格は3万5千ドルからであり、テスラの前モデルの半額以下だ。実際に商品が市場に出るのは2017年後半からだが teslamotors.comのサイトから千ドルのデボジット(予約金)で予約ができる。

まず、このかっこいいモデル3は一度の充電で346キロもの距離を走行することが出来て(これはリーフや i3の2倍の距離にあたる)時速0kmから95kmまでの加速を6秒以内で行い、五つ星の安全保証をされたデザインを持ち合わせている。自動操縦機能もある。スポーティーで、居心地が良く、魅力的で、安全で効率がいい。これをまとめると、どんな人でも喜んで運転したくなるような車ということだ。

tesla_model_s_digital_panels_720


けれど、どうして国家で一斉停電を行うような国で、南アフリカ人が3万5千ドルもの費用を電気が必要な車に費やすというのだろうか?

テスラの答えは「パワーウォール」だった。

このコンパクトで、壁に作り付けるタイプの家庭用充電器はソーラーパネルから電気を充電し、日没後は家庭用の蓄電池として使う事もできる。緊急用バックアップ電力として使用することで停電の影響を心配せずに済む。工業や商業用の電力ストレージにはよりスケールの大きいパワーパックがあり、ホームページの記載によると、商業的な利用に対し「電力にまつわる部分を、より調整し易く効率的で信頼できるものとした」ということだ。
今のところ、大部分のソーラーパネルは、そこで消費する電力を供給するために、ショッピングモールや小売り店が集まる場所に設置されています」とテスラの南アフリカの新担当部長のエヴァン・ライス氏は言う。「もし電力を送電線に逆に売る事が出来るようになれば、(このストレージを買う事に関して)より魅力的なビジネスとして作り上げる事ができ、民間資本の導入も進むでしょう。