5年ぶりのエッセイ『ここからは、オトナのはなし』を上梓した作家のLiLyさん、『家族無計画』『りこんのこども』などの著書が注目を集めるエッセイストの紫原明子さん。同世代で離婚歴のあるママ、という共通項のあるおふたりに、結婚のこと、子育てのこと、新しい家族のかたちのこと……を語っていただきました。聞いてみないと知らないことばかりの生活です。
(構成:池田園子 撮影:菊岡俊子)


離婚は「傷」ではないという実感

紫原 『ここからは、オトナのはなし』、拝読しました。家庭環境や経験は私とLiLyさんとで全然違うけど、このエッセイに書いてあることは、すごくよくわかるなって思いました。母親になると「母親は、こうでなくてはいけない」とコンサバな考え方にとらわれる、とか。

LiLy ありがとうございます。お互いに同年代で、ママで、離婚も経験したうえで、「フツウの結婚/フツウの家族というかたち」に疑問を持っていて。実は、家入さんと先に知り合って、その流れでデビュー前の明子さんの文章を読んだのが最初だったんです。ものすごく文才があって面白くって、衝撃を受けて、書籍化すべきですこれは、と家入さんに連絡しました(笑)。

紫原 ははは(笑)!

LiLy  と、同時に、とても自由な家入さんが「夫」って、たいへんだろうなと他人ながら思っていました(笑)。というか、ご本人にもツイッターでそのむねをリプしたことすらあります。そしたら「確かに!」というような返事をご本人からもらって、あぁ、やはり家入さんは自由人でありながらも、本当に憎めない素敵人間だなぁ、と(笑)

紫原 わかります(笑)。彼は根っから自由な人ですからね。

LiLy  家入さんの家庭という箱に収まらない自由な感じが、当時結婚していて育児と仕事の往復に全力だった頃の私には、なんでだか、やけに気になったんですね。今振り返ると、同族嫌悪的な感情だったんじゃないかって。私自身が、「結婚」という枠におさまることができないタイプだったんだなと、今改めて思っているので。

紫原 なるほど。私は彼の自由さがうらやましいな、と思っていました。それでも、子供に申し訳ない気がして、羨ましいとは思わないようにしよう、と自分の感情と戦ってました。

LiLy  わかります。子供ができても仕事のペースを落とさずにいられる夫が「羨ましい」と私は口に出して言ってしまっていました……。

 

シングルマザーは意外にモテる

紫原  実は離婚前は、離婚すると「脛に傷を持って生きる」みたいな、なんとなく暗い感じを想像していました。でもシングルに戻って、自由になってみると、まったくそんなことはなくて。

LiLy これは本にも書いたのですが「子供もいるのに離婚してタイヘンだね」と言われたことが、男女問わず一度もないことに気づいてビックリした部分があって。住んでいる場所もあると思いますが、女性の経済的な自立が一部では既に浸透していますよね。「離婚が傷」と言われることはゼロで、どちらかといえば「もう子供もいるし余裕だね」という意見ばかり。私自身、二十代の頃からもし自分が妊娠しにくい体質だった場合を考えて養子縁組について調べるほどに、母親になることを熱望していたので、そこの部分に関して本当に同感です。

紫原  離婚して、もうひとつ意外だったのは、シングルマザーは思いのほかモテる、ってことですね。良くも悪くも、男の人から「この人には子供がいるし、結婚も迫ってこなさそう」だと安心されるんでしょうかね。

LiLy  母という存在が男の人の目には、こうも魅力的に映るものなの!? というのは私も目からウロコでした。

紫原 とくに私は18歳で結婚して家庭に入っていたこともあって、30歳になる少し前に初めて社会に出たとき、ろくに美人でもないのに女性というだけでこんなに優しくしてもらえるの? と、びっくりすることもありました。「あぁ、なんか楽しいなぁ」って穏やかな気持ちに(笑)。別居から離婚まで4年くらいかかったので、女性としての自尊心はすっかり折れていたんですけど、社会の中でずいぶん癒されました。

LiLy 母になり離婚を経てモテる、というのは一種のセラピーですよね。

紫原 そう、まさに。

LiLy 若いときの「モテる」とは感じ方が違って、じわじわ癒やされるんですよね。自尊心を立て直していけるというか、女としての自信を失っていたところに、キラキラしたものが染みていく感じ、というか。なんかもっと穏やかな気持ちで、わー、ありがとうね、って(笑)。

紫原 嬉しいよー、ありがとねーみたいな(笑)。優しい気持ちが満ちていきます。

LiLy ちなみに明子さんは、もう一度結婚したいと思いますか?

紫原 私は何度でも結婚したいですね、というより、大人の務めとして、結婚というものの価値を下げたいなと思っていて。「結婚しなきゃいけない」とか、「結婚していても幸せじゃない」とか、結婚に伴う苦痛を抱えてる人はとても多いと思います。単純に、多くの人がより幸せに生きられるために、「この前、離婚したんだ」「へー、そうなんだ」で済むような、結婚しやすく、離婚しやすい社会になればいいと考えてるんです。